12月14日に行われる世界バンタム級2団体統一王者・井上尚弥選手(28)=大橋=の防衛戦は、通常のテレビ放送がなく地上波では見ることができません。
この試合を観るにはインターネット配信サービス「ひかりTV」と、インターネットテレビ「ABEMA」が展開する、ペイ・パー・ビュー(PPV)と呼ばれる課金放送方式を利用しなければならないのです。
どう考えても日本中が大注目すべき一戦がテレビで見られない状況にネット上でも不満が爆発。
- 何で見られないんだ!
- フジテレビは何やってるの?
- 有料だと高いんだよ!
などの声が挙がっています。
この記事では、井上尚弥選手の防衛戦が地上波放送されない理由とその背景について迫っていこうと思います。
もくじ
井上選手の防衛戦が地上波放送されないことに対する世間の声
やはりかなり多くの不満の声が聞こえてきます。
井上尚弥選手の人気・実力は過去の日本人ボクサーの中でもトップクラス。そんな彼の試合が見られないのですから不満の声は当然と言えます。
ではなぜこんな状況を招いてしまったのでしょうか。
井上選手の防衛戦が地上波放送されない理由
それでは井上尚弥選手の防衛戦が地上波放送されない理由を3点に絞って解説していきます。
まずその3点とは
- ファイトマネーの高騰
- フジテレビの金欠
- ボクシング界のビジネスモデルの変化
一つ一つ解説していきますね。
地上波放送されない理由①ファイトマネーの高騰
2021年6月、米ラスベガスで行われた防衛戦における井上尚弥選手のファイトマネーはおよそ100万ドル(一億円)と言われています。
これは他の世界チャンピオンと比較しても破格の金額で、一般的には2〜3千万円、人気選手でも4〜5千万円とされています。
放映権料がバカ高い
井上選手のファイトマネーがここまで吊り上がったのはその人気と実力にあります。
井上尚弥選手は12月13日現在で21戦無敗、KO勝利率85.71%というスーパースター。世界的な注目度も集まる選手です。
そんな選手の試合を中継したいという放送局は多くなるばかりで、ラスベガスの試合では生中継のWOWOW、地上波(録画放送)のフジテレビ、さらには現地アメリカの放送局も合わさったことでとんでもない放映権料になったと言われています。
これが井上尚弥選手のファイトマネー高騰の大きな理由です。
芸能プロも絡んでいる?
井上尚弥選手のファイトマネー高騰の背景には日本の芸能プロダクションであるホリプロの存在もあるとされます。
井上選手は芸能事務所のホリプロに所属しています。(これは芸能活動のためではなくCM出演やイベント活動のマネジメントのためです)
ホリプロは原則としてファイトマネーからは手数料を取りません。というか試合をマッチメークしたりするわけではないので取れるわけないのですが。
しかし井上選手が活躍すれば広告収益は上がるので、ファイトマネーの上昇には様々な手助けをするのです。
これも井上尚弥選手のファイトマネーが高騰した理由と言えます。
地上波放送されない理由②フジテレビの金欠
井上尚弥選手の試合はこれまで、地上波ではフジテレビがほぼ独占をしていました。
しかし、日本を代表するテレビ局であるフジテレビがその栄華を極めたのも今は昔。最近では他のテレビ局に視聴率で置いてけぼりを食らう日々が続く始末…。
そんな状況では、スーパースター・井上尚弥の試合の放映権料をポーンと出せる余裕はもはやどこにもありません。
希望退職者を募るフジテレビ
「フジテレビが希望退職者を募る」という衝撃的なニュースが流れたのは今年11月。
民法キー局で希望退職者を募るなんて、そこまで追い詰められているのか…という驚きの声が多く挙がりました。
経営が厳しい状況にあるのは間違いなく、金欠状態のフジテレビが地上波放送の権利を手放さざるを得なかったのはある意味当然のこととも言えます。
地上波放送されない理由③ボクシング界のビジネスモデルの変化
今回、ペイ・パー・ビュー(PPV)方式で井上尚弥選手の試合を放映するひかりTV。
運営するNTTぷららの永田勝美社長は、まだ日本で定着していないPPVに踏み切った理由をこう話しています。
「一番の肝はスーパースターの井上選手という存在であり、大橋秀行会長の思いだ。
(日本のボクシング界のビジネスモデルを)変えなければいけない」
この発言の背景には、日本のボクシング界で競技だけで食べていける選手が極わずかであるという事実があります。
井上選手のような稼ぐスターをたくさん作りたい!
日本チャンピオンになったぐらいでは食べていけないのが日本のボクシング界の現状。
であるならば、試合を地上波でタダで見させるのではなくPPVのような有料サービスでお金を取り、ファイトマネーがしっかりと選手に行き届くようにしたい!という思いが、ボクシング界にはあるのでしょう。
有料化は諸刃の剣
しかし放映の有料化は諸刃の剣です。
現にTwitterではその金額についても不満の声が多数。
これらに対し先述の永田社長は
「相当安くしたつもり。これで高いと言われると困る」
と話しています。
その金額は¥3,960―也…。高いか否かは個人の感覚なので何とも言えません。
それよりも危惧するべきは、ひかりTVの会員がまだわずか300万人程度しかいないこと。
下手をすると地上波で放送した方がたくさんの人がその試合を見てボクシングに興味を持ってくれるかもしれません。
この選択が吉と出るか凶と出るか…。
井上尚弥選手の防衛戦を有料でもいいから見る!という方は↓から
https://abema.tv/payperview/D1NLMfWbKFcwbV
地上波から消え行くスポーツ放送
ボクシングのみならず、いま地上波からは多くのスポーツ放送が姿を消しつつあります。
サッカー、ゴルフ、テニス、その他諸々
最も衝撃的だったのはサッカーW杯アジア最終予選のアウェー戦が、月額1,925円かかる「DAZN」(ダゾーン)との契約が必要になったことでしょう。
こちらも法外な放映権料の問題がありました。
他にも女子ゴルフの国内ツアーを統括する日本女子プロゴルフ協会は、来年から放送権を一括管理する方針を示しています。
これにより放送権が映像配信業者らに独自に販売できるようになるとのことです。
井上尚弥の防衛戦はなぜ地上波放送がない?変わりゆくスポーツ界とテレビ局の関係性
井上尚弥選手の防衛戦が地上波放送されない理由について解説してきました。
その理由は主に
- ファイトマネーの高騰
- フジテレビの金欠
- ボクシング界のビジネスモデルの変化
の3点であり、さらにその背景には放映権料を巡るスポーツ界とテレビ局(放送局)との関係性の変化があるようです。
スポーツ界の発展とは、その競技者が大金を得て良い生活を送れるようになることなのか、はたまたその競技を身近に感じる人が増え多くの人々がそのスポーツを楽しむことなのか…
これは今後のスポーツ界にとって大きなテーマとなるのではないでしょうか。
…という壮大な話は置いておいて、地上波でその姿が拝めなくなっても井上尚弥選手の活躍には今後も注目したいですね。