9月1日、厚生労働省が変異株「ミュー株」が国内で初めて感染確認されたと発表しました。
ミュー株はコロンビアで2021年1月に報告された変異株。
今回ミュー株が検出された女性2人は、空港検疫で6月と7月にコロナウイルス感染が確認されていました。
これに対しネット上では
- なぜ今になって発表?
- どうしてすぐに公表しないのか
- オリパラがあったから発表できなかったんだろ
などの声があがっています。
この記事では、なぜ6月と7月に検出されたはずのミュー株が9月になって発表されたのか、オリパラへの忖度があったのかを解説。
また、変異株にギリシャ文字を使う理由についても解説していこうと思います。
もくじ
ミュー株の確認発表時期に対する世間の声
やはりなぜ2ヵ月3ヵ月の期間が空いたのか、それはオリンピック、パラリンピックがあったからだろという声が多いようです。
ミュー株の発表はなぜ今?
先述の通り、ミュー株自体は今年の1月にコロンビアで報告されています。
日本でも検出されたのは数ヶ月前なのになぜ今になって発表となったのでしょうか。
WHOの認定が鍵
新型コロナウイルスの変異株について、その分類や危険度のランク付けはWHO(世界保健機関)によってなされます。
例えばやたらと騒がれた「デルタ株」については、WHOが“VOC”という最も危険視すべき変異種であると位置付けています。
以下の画像がその一覧となります。(この表ではミュー株はまだ分類されていません)
WHOが「2番目に危険視すべき変異株」に認定
ミュー株はWHOによって“VOI”という2番目に危険視すべき変異株にランク付けされました。
そしてこのランク付けされたのが2021年8月30日。
ミュー株が国内で初めて確認されたという発表の前々日です。
つまり、
感染確認されたことを報道して注意を促すレベルの変異株だ
と認識されたのはまだ数日前なのです。
発表が今(9月)になった大きな理由はここにあります。
コロナの変異株はものすごく沢山ある
コロナの変異株は現時点で20種類ほどあると言われています。
新たに発見される変異株のすべてを検出される度に発表していたらどうなるでしょう?
コロナウイルスは全く未知で永遠に収束することがないのではないか…
という必要以上の不安を煽ることになりかねません。どうしたらいいのか分からずパニックになってしまう人も出てくるかもしれません。
変異株の公表時期や報道の仕方については、感染力および毒性の強さに応じてWHOがランク付けした基準を元に調整されているのです。
オリパラへの忖度があった?
新たな変異株が公表されなかったのはオリンピック・パラリンピックを開催するために情報を隠蔽したという声がありますがどうなのでしょう。
変異株かどうかを調べるのには時間がかかる
感染が確認されたウイルスが変異株かどうかは検査をしなければ分かりません。
そしてその検査には一定の時間がかかるとされています。
変異株の場合、国立感染症研究所に検体を送ってゲノム解析をしていた。どの国の由来か分かるまで検体を送る時間に加え、全国から検体が集まり「順番待ち」もあるため、判明まで一定期間を要していた。
2021/5/29 富山新聞デジタル
全国から集まる検体を一つ一つ検査するのに必要な時間は相当なものであることが予想されます。
今回も仮に6月、7月の時点で変異株であることは分かっていても、それがどの国由来のものであるか特定をするのに時間がかかったということは十分に考えられます。
オリパラへの忖度は考えづらい
以上のようなことから、ミュー株の確認から発表までには一定の期間を要することが分かります。
オリンピックやパラリンピックを開催したいから情報を隠蔽して発表しなかったというのはさすがに考えすぎではないでしょうか。
むしろ何も確証がない中、適当な情報を流してしまうほうが無責任と言えるかもしれません。
進む変異株特定への動き
確認された変異株がどの国由来のものかを早期判別するための動きは加速しています。
各都道府県独自の衛生研究所で、変異株のゲノム解析検査を導入するケースが増えてきているのです。
これらが上手く機能すれば変異株の特定が早期にできるようになり、発表やその後の対策の手を早く打てるようになるのです。
変異株にギリシャ文字を使う理由
お気づきの通り、変異株にはアルファやベータ、デルタなどのギリシャ文字が使われます。
その理由は一体なんなのでしょうか。
偏見回避のため
変異株の呼称を決めるのもWHOです。
その呼称にギリシャ文字を使う理由については
「汚名を着せることや差別につながることを避け、コミュニケーションしやすくするため、当局やメディアが新しいラベルを使うことを推奨する」
としています。
危険視される変異株が最初に見つかった英国、南アフリカ、ブラジル、インドは、他国から過剰な偏見を受けてしまう可能性があるため、ブラジル株やインド株といった呼称はしないようにと通達がされたのです。
その国で変異株が生まれたとは限らない
最初に見つかったからといって、その国で変異株が生まれたとは限りません。
ウイルスというのはコロナウイルスに限らず常に変異し生存し続けようとします。変異したものがたまたまその国で最初に発見されただけであって、変異自体はいつどこの場所でも起きているのです。
変異株に特定の国名を入れることで、あたかもその国が発祥地のようにとらえられ、その国にルーツのある人が差別や迫害を受ける懸念もあることから、ギリシャ文字による呼称となったのです。
ミュー株の発表が遅くなったのはWHOの認定と検査にかかる時間が要因
6月7月に確認されたミュー株の発表が9月になったのは、WHOが危険視すべき変異株だと認定した時期と、どの国由来の変異株かの検査に時間がかかったことが要因でした。
しかし次から次へと現れる変異株のすべてが猛威を振るうわけではありません。落ち着いた対応さえすれば十分に感染拡大を防ぐことは可能なものもあります。
コロナ収束への道はまだまだ険しいですが、しっかりとした情報を入手して混乱やパニックに陥ることなく冷静に対応していきたいですね。