3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)の組合せが発表され話題になっています。
そこでやはり気になるのは我らが侍ジャパンと、最強アメリカの動向。予選ラウンドから熱い試合が観たいファンばかりだと思いますが、その期待を裏切るような組合せにネット上では…
- なんやこれ…
- 日本とアメリカ有利スギィ!
- Dグループが死の組すぎる
など、納得がいかないという声も多く聞かれているようです。
この記事では、なぜWBCの組合せがこんなにも偏ってしまっているのか…、その理由や背景について迫りたいと思います。
もくじ
WBCの組合せに関する世間の声
皆さん、何かと不満はおありのようで…
WBCの組合せ
ではまず実際にWBCの組合せ表を改めて確認してみましよう。
アメリカが群を抜いて楽勝
この組合せでまず群を抜いてダントツ有利なのはアメリカです。
同じグループC(プールC)内にはいわゆる強豪国と呼べるチームはおらず、この組合せでアメリカが3位以下になる可能性はほぼほぼゼロでしょう。(第1ラウンドは2位以上で次のラウンド進出)
これにはさすがにアメリカ国内からも「いくらなんでも”フリーパス”(楽勝)すぎる」という声が飛ぶほど。
グループCは既に1枠が決定していると言っても過言ではないのです。
“死の組”グループD
逆に強豪国がひしめき合っているのがグループDです。
ここにはプエルトリコ、ベネズエラ、ドミニカ共和国という、メジャーにも多数のスター選手を送り出しているチームが3つもあります。
はっきり言って残りの2カ国、イスラエルとニカラグアにはもう第2ラウンド進出の目がハナからありません。まあこの2カ国は仮に他のグループだったとしても突破は厳しいですが…。
第2ラウンド進出は上位2カ国ですから、プエルトリコ、ベネズエラ、ドミニカのうち1つは第1ラウンドで姿を消すことになります。いずれも優勝候補と言っていいレベルの強豪なので、かなりもったいない気がしてしまうのは致し方ありません。
日本もかなりヌルい!
日本も正直言ってかなりヌルい組合せです。
同組にお隣・永遠のライバルである韓国がいるのでそれほど手薄な印象を持たない方もいらっしゃるかもしれませんが、逆に言うとまともに相手になるのが韓国ぐらいで、オーストラリアはごく一部の選手を除くと他はアマチュアレベル、中国とチェコに関してはまあ話にならないでしょう。
中国やチェコ戦には日本の先発陣の誰が出るにしてももったいな過ぎる!
ここで万が一にもダルビッシュや大谷、期待の星・佐々木朗希が投げて怪我でもしてしまったら…目も当てられないと言えます。
開催地も超有利
組合せ表にはそれぞれのラウンドの開催地も表記されていますが、一部が台湾で行われる以外はすべて日本とアメリカ。
アメリカに至っては決勝までのすべての試合を自国内で行えることになります。
「ホームアドバンテージ」とは言いますが、時差の心配もなく、いつもと同じ環境で目の前の試合だけに集中できるメリットというのも計り知れません。
大きな問題は抽選がないこと
この組合せの大きな問題点は、これが抽選による結果ではないことです。
普通こうしたスポーツの大会では、サッカーのワールドカップを見て分ける通り出場国の組合せはクジ引きによる抽選で決定します。
理由は単純で、それが最も公平なやり方だからです。
それで強豪国が1つのグループに固まってしまっても、抽選の結果であれば文句の言いようがありません。しかし…
地域ごとに分けられただけ
しかしWBCの組合せは、抽選どころか地域ごとに分けられただけ。
もちろんヨーロッパやアフリカから、遠いアジアやアメリカまで行く国もありますが、それらの国は所詮”弱小国(野球においての)”です。
この組合せが公平な方法によって決定されたものだとは全く思えませんし、実際にそうではありません。
それは、そうしなければならない理由があるからです。
日本やアメリカが有利な組合せの理由
WBCの組合せが日本、アメリカ有利な内容になっている理由は単純明快「WBCが日本とアメリカのものだから」です。
そもそもWBCの主催がMLB
まずアメリカ有利の背景には、WBC自体がMLB(メジャーリーグ)の手によって開催されているという事情があります。
WBCは
MLBの海外市場開拓戦略の一環として、野球の魅力を世界に広める目的で2006年に第1回、2009年に第2回が開催され、以後、4年ごとに開かれている
大会です。
MLBが主催なので、昨年のこの時期、メジャーリーグがロックアウトしていたことでWBCの開催そのものが危ぶまれました。(ロックアウトについては↓)
「野球の魅力を世界に広める」という崇高な目標を掲げている以上、その主催国がいとも容易く大会から姿を消すわけにはいかない…というところなのでしょう。
金を払っている日本
WBCにおいて日本が恵まれているのは、“ジャパンマネー”が大きく動いているからです。
というのも、WBCのスポンサーには日本の企業が非常に多いとされています。有名なところでは
- KONAMI
- ブルックス・ブラザーズ・ジャパン
- ガンホー・オンライン・エンターテイメント
などなど。
WBCはアメリカ国内よりもむしろ日本の方が過熱することもあり、日本企業はここぞとばかりに資金を投入。
「スポンサー様」のお声が強いのは万国共通のようで、大事な大事な侍ジャパン様には特別な配慮がなされているのです。
致し方ない面も…
しかしながら、日本とアメリカに優遇措置が取られているのは単に主催者とスポンサーだから、という理由だけではありません。
野球はとてもマイナーなスポーツです。マイナーすぎて2024年・パリ五輪からはオリンピックの正式種目から外されるほど。
だからこそMLBは世界に野球の魅力を伝える必要があるわけですが、現時点ではまともに野球に取り組んでいる国が少なすぎて、今回のWBCでも分かる通り各国の戦力バランスは全く取れていないのが現状です。
そうなると逆に、WBCは日本とアメリカの力がなければ成立しない、ということも言えます。
開催地ひとつ取ってみても、練習場や球場、設備やその他セキュリティ等の問題について考えた場合、国際大会を開ける材料が揃っているのは日本とアメリカだけと言っても過言ではありません。
「大会を滞りなく開催しようと思ったら、こうするより他にない」
という側面もあるのです。
ヌルい組合せによる不安点
組合せがヌルいことは何もいい事ばかりではありません。
日本が第1ラウンドで戦う中国やチェコには、おそらく140km台のボールをバンバン放れるピッチャーはいません。その試合でボロ勝ちできたとしても、甘い球に目が慣れてしまってバッティングの感覚が狂うということは十分考えられます。
投手陣も、本来なら打たれる甘いコースの球が打たれないことで気が緩み、緊張感を失ってしまう可能性もあります。
その点、死の組で戦うチームは第1ラウンドからいきなり極限レベルの試合を求められます。そして第2ラウンド以降もその集中力と闘志を維持してくるでしょうから、ヌルい試合ばかりだったアメリカや日本がそうしたチームにコロッと負ける…というパターンも想定されます。
「決勝まで行って当たり前」なんて感覚でいては、絶対に足元を掬われるでしょう。
WBC組合せ、日本アメリカ有利の理由は「主催国とスポンサー」
発表されたWBCの組合せで日本とアメリカが有利になっている理由について迫ってきました。
その理由とは
- アメリカ(MLB)がWBCの主催だから
- WBCのスポンサーに多くの日本企業が名を連ねているから
ということがお分かりいただけたと思います。
しかし、大会の開催そのものに、日本とアメリカの力が必要なのは間違いなく、その結果2つの国が有利にならざるを得ないという側面もあります。
いずれにせよ大きな期待と注目が集まる侍ジャパンとWBC。
無事に開催できることをまずは喜びつつ、野球の魅力が世界に広まるような盛り上がりを見せてくれることを祈ります。