年が明け、野球・侍ジャパンが注目を集めています。
昨年、侍ジャパンの監督に就任した栗山英樹監督が、2023年に行われるWBC日本代表チームにメジャー(MLB)組の招集を宣言したのです。
栗山監督と言えば、日本時代の大谷翔平選手を育て上げ、その師弟関係は誰もが知るところ。
大谷選手の侍ジャパン入りか、さらには日本ハム時代の関係性からダルビッシュ投手も招集か、と期待度が高まっています。
ところが世間からは…
- いや、WBC無理でしょ
- 開催されないって
- 恥ずかしいからそんな気合い入れるのやめて…
などの声が上がっています。
なぜ盛り上がりに水を差すような話が湧いてくるのでしょう。
この記事では、WBCが開催されないと言われる理由や背景に迫りながら、大会そのものの価値についても改めて考えてみたいと思います。
もくじ
WBC開催に関する世間の声
現在の状況での開催は難しいのではないか…という見方が強いようです。
WBCが開催されない理由
それではWBCが開催されないとされる理由について迫っていこうと思います。
そもそもまだ開催「予定」である
冒頭にも記述しましたが、現状WBCは2023年に開催される「予定」です。
2023年に開催されることが決定しているわけではないのです。
参加国の予選スケジュール調整や運営の準備などを考えると、開催までもう1年ほどしかないのにまだ「予定」の状態。
この時点でもうかなり怪しいですよね…。
なぜこんなにもグズグズなのでしょう。
WBCが開催されない理由①コロナ禍
世界情勢的にこれは言わずもがな。
コロナがこれだけ落ち着いているのは日本に限った話で、世界各国ではまだオミクロン株を筆頭にコロナウィルスが猛威を奮っています。
現に、本来であれば2021年に開催予定だったものが、新型コロナウイルスの感染拡大で2020年のMLBのスプリングトレーニングが中断。
それによりWBCの予選ラウンドも中止となり、結果的に延期せざるを得ない事態になったのです。
MLB関係者の弱気発言
コロナ禍でWBCの延期が決定した際、主催者であるMLBの関係者はこんな発言をしたといいます。
「WBCは一旦中止にし、早くても次回開催は2023年になる」
「一旦中止」そして「早くても2023年」という物言いから、すでにかなり弱気であったことが伺い知れます。
WBCが開催されない理由②MLBのロックアウト
実はコロナ禍よりもこちらの方が問題です。
現在MLBは「ロックアウト」という状態に突入しており、WBCどころか通常のリーグ開催すら黄色信号が灯っています。
ロックアウトとは
ロックアウトとは、労働争議における資本家側の戦術で、工場などを閉鎖して労働者に就業させないことを指します。
MLBに置き換えると、資本家側がMLB、労働者側が選手会という格好です。
ロックアウト中である現在、MLBでは球団の施設や設備を選手が一切使用できず、球団関係者との接触や移籍、トレード交渉なども行ってはいけないという異常事態となっているのです。
厳しい労使協定
MLBと選手会の間の労使協定は数年ごとに更新されます。
これが統一労働規約(Collective Bargaining Agreement)、CBAと言われます。
CBAは選手の最低年俸や契約金など労使関連のルールを決めるだけでなく、CBA期間中に実施される国外試合の開催場所や時期なども明確に決められています。
ちなみに2019年、日本で7年ぶりにMLB開幕戦が実施され、日本のファンの前でイチロー選手が現役生活を締めくくることになったあの試合も、CBAで合意されていたものです。
これまでのCBAは2021年12月ですでに失効していますが、MLBと選手会の間で様々な条件面の折り合いがつかず、新たなCBAが更新されていないのです。
この状況はメジャー移籍を表明している鈴木誠也選手にも影響を及ぼしそうです。
CBAの更新がされないとWBC開催は不可能
年棒や契約金の問題はWBC開催とあまり関係がないですが、WBCが国際大会である以上、CBAでの合意がないと予選ラウンドの日程すら組めません。
MLBと選手会の折り合いがつき、新たなCBAを更新しない限り、WBCの開催は不可能なのです。
今回のロックアウトは長期化する見通しで、それが解除される(=CBAが更新される)頃にはもう手遅れという見方が強いと言われています。
先のMLB関係者の弱気発言も、このCBA更新に関する問題を含んでのものであると思われます。
そもそもWBCって必要?
これだけ栗山監督はじめ関係者が気合いを入れ、メディアも大々的に取り上げるWBCですが、そもそも本当に必要なのかという声はあちこちで聞かれます。
野球はローカルスポーツ
世界で野球(ベースボール)に真剣に取り組んでいる国ははっきり言ってごく少数です。
その証拠に、日本が金メダルに輝いた東京オリンピック・野球競技のトーナメント表も、実に歪なものでした。
世界大会と言っても優勝争いができる国はほんの数ヶ国。
そんなローカルスポーツの大会にそこまで真剣になる必要がない、というのは一理あると言えます。
もともとがMLBの余興
WBCはもともとがMLBの余興です。
2006年に第1回大会が開催されたWBCですが、アメリカ以外の国籍を持つメジャーリーグ選手が増えてきたこと等に伴い、アメリカ以外の国でMLB開幕戦を開催するなどMLBは世界にも進出し始めました。
そして、さらなるMLBの拡大や収益の拡大を狙って提案されたのがWBC。
「野球を世界に広めるため」とか「野球を通じて世界を平和に」みたいな狙いはほとんどなく、よりMLBが儲けるために世界の国々を巻き込んで開催されるのがWBCなのです。
そんな背景を知っていると、WBCに熱を上げるのはちょっと恥ずかしい気持ちになってきます。
もしWBCで大谷選手がケガでもしたら…
もし、そんなローカルイベントに参加したことで、今や日本の宝となった大谷翔平選手がケガでもしようものなら…
一体誰が責任を取れるというのでしょう。
WBCを行えば日本のテレビ局やMLB関係者の懐は潤うのかもしれませんが、そんな目先の利益のために危険にさらされる選手たちはたまったもんじゃありません。
WBCの開催は非常にリスキーであると言えます。
WBCが開催されない理由!最大の原因はMLBのロックアウト!でも別に開催されなくても…
WBCが開催されない理由とその背景に迫ってきました。
そして仮に本当に開催されなかったとしても、WBC自体の本当の価値は薄いということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
選手選考やデータ収集ですでに相当頭を悩ませているであろう栗山監督。
どうかご無理をなさらないようにと願わざるを得ません。