メジャーリーグで2023年から施行される「ピッチクロック」。
日本ハム・吉村本部長もNPBでの導入について言及したこのルールは、試合の流れや選手達のプレーに大きな影響を与えそうです。
しかし、日本では馴染みのない「ピッチクロック」というワードには
- ピッチクロックって何?
- どんな効果があるの?
- 悪影響もあるの?
など、疑問の声が多く挙がっているようです。
この記事では、近い将来日本でも導入されるかもしれない「ピッチクロック」について、あれこれ掘り下げていこうと思います。
もくじ
ピッチクロックとは
まずはピッチクロックとは何なのかを解説していきます。
ピッチクロックは”投球時間制限”
ピッチクロックとは“投球時間制限”のことです。
ピッチクロックが導入されると、ピッチャーはキャッチャーからの返球を受けて投球するまでの時間に制限が設けられることになります。
導入例(メジャーの場合)
このピッチクロックが2023年から導入されることが決定しているメジャーリーグ。
実際の「制限時間」は、
- 走者なしの場合で15秒
- ありの場合で20秒
となるようです。
また、制限はピッチャーだけでなくバッターにも設けられ、制限時間の8秒前までに打席に入っていなければならないとされています。
バッターへの制限も当然必要で、ピッチャーの制限時間が残り2秒とかでようやくバッターがバッターボックスに入ったところで投球が間に合うわけがないからです。
違反するとどうなる?
このピッチクロックのルールに違反すると、ピッチャーにはボールカウントが1つ、バッターにはストライクカウントが1つ追加されます。
つまりピッチクロックに違反することでフォアボールや失点、またはバッターアウトという可能性もあるわけで、選手にとっては遵守せざるを得ないルールということになります。
どうやって残り時間を知らせるの?
残り時間の伝達方法については、以下の画像が参考になると思います。
これらはアメリカ・マイナーリーグでのテスト導入時の写真のようです。ベンチ前やフェンスにかなりデカデカと表示されており、嫌が上にも目に入りそうです。
まあ逆にこれぐらいしないと、試合に集中している選手に知らせることはできないのでしょう。単純ですが最も確実な方法と言えます。
どんな効果が見込めるのか
ピッチクロックを導入することでどんな効果が得られるのでしょうか。
最も大きな効果は「試合時間短縮」!
ピッチクロック導入による最も大きな効果は何と言っても「試合時間の短縮」です。
野球中継を見ていれば分かりますが、全ッ然投げないピッチャーというのが実際に存在します。誰とは言いませんが…
ピッチャーマウンドでロジンバッグを触って〜、グローブをつけ直して〜、帽子を被り直して〜、ボールを握り直して〜、アンダーシャツの袖を気にして〜、やっとキャッチャーのサインを見たと思ったら首を振って〜…で、プレートを外してまたロジンバッグを触って〜…(以下、無限ループ)
早よ投げろや!!
と誰しもが言いたくなるはずです(しかもやっと投げたと思ったら打たれる)。こんなことをしていたら試合時間は平気で3時間を超えてしまいます。
「野球がつまらない」と言われる最大の要因は“動いてない時間が長いから”。試合のテンポアップ、時間短縮は、新規ファン獲得のための絶対条件と言えます。
地球にも優しい
ナイターで行われることの多い日本のプロ野球。
当然ながら球場には煌々と照明が点灯しているわけですが、あれだけの照明を長時間に渡って使用し続けたら、一体どれだけの電力を消費しているのか…
それを一日に何試合も、そしてシーズン中はほぼ毎日のように繰り返しているのです。
興行である以上、仕方ない面もありますが、CO2排出量の削減に関してはプロ野球界もずいぶん前(2008年頃)に提唱していました。
試合時間の短縮は地球にとってもメリットがあるのです。
マイナーでの実験結果
アメリカは既にピッチクロックをマイナーリーグで試験的に導入。その結果は以下の通りです。
ピッチクロック導入前と後を比較すると、見事に試合時間だけが短縮され、他の数値には大きな影響が出ていないことが分かります。(ちなみに画像の項目は上から「平均試合時間」「平均得点」「平均打率」「三振率」「四球率」「死球率」)
ゲームの醍醐味は損なわれず、時間短縮というメリットが受けられる…ピッチクロックの導入には大きな意味があると言えそうです。
悪影響やデメリットは?
いい事づくめのピッチクロック導入ですが、考えられる悪影響やデメリットはあるのでしょうか。
ピッチャーの負担が増加?
ピッチクロックにより最も影響を受けるのは間違いなく投手です。
たっぷり時間を取って投げたい投手や、投げるまでのルーティーンを大事にしたい投手にとってはかなり苦しい制限となるでしょう。さらにテンポアップを求められることで疲労も早まる可能性があります。「早く投げなければいけない」というプレッシャーは、精神的な負担にもなりそうです。
ただ、先ほどご紹介したマイナーリーグでのテスト導入結果を見ると、数値面ではピッチャーだけが割を食うようなことはありません。
そもそもルールは常に変わる可能性があり、公式球ですら細部があれこれ変化する中で、各々の個性によって活躍できるピッチャーも変わるのは仕方ないことです。
「ファンあってのプロ野球」ですから、試合時間短縮が求められているのであれば選手もスタイルを変える必要に迫られるのは当然ではないでしょうか。
野球は”間”を楽しむスポーツ?
日本の野球ファンからは「野球とは“間”を楽しむスポーツだ!時短ばかりを求めたら、打者とバッテリーの駆け引きや、一つ一つの打席のドラマ性が薄れるだろう」という声も少なからず聞かれます。
もちろんそうした側面もあるのは理解できますが、さすがにこれは少々時代錯誤の意見です。
2022年のNPBにおいて、コールドゲーム・延長試合を除いた9回試合のみでの平均試合時間は何と
3時間9分
です。
娯楽の少なかった昭和の時代ならいざ知らず、ネットにゲームにスマホ、何でもあるこの現代で3時間以上一つの試合に集中させるほどの力が、果たしてプロ野球にあるでしょうか。
少しでも若い世代を意識した改革をしていかない限り、プロ野球そのものの未来も無くなってしまうのです。
日ハム・吉村本部長の発言
日本ハムの吉村本部長はピッチクロック導入に関して
「試合時間が絶対に短くなる。あれをやるといいかも」
と発言。さらに
「ピッチクロックが国際的なルールになるなら、(日本でも)可能性はある。実際、ファンのために早い方がいい。データ的にウチは投球間隔が長かった。テンポの悪さみたいなものがあったと思う。
(導入の手始めとして)例えば日本ハムの鎌ケ谷だけでやるとか。いずれ変わるんだったら直しておかないといけない。審判は(違反を)取らないだろうけど、時計を出しておくだけならいいと思う。わかりやすいし、変わるでしょう」
と、日ハムの2軍戦で自発的に導入する案も示唆しました。
野球界きっての改革推進派である吉村氏…NPBでの導入はいつから?
その思い切ったやり方で日ハムファンからは何かと批判も喰らいがちな吉村氏ですが、野球界発展のために尽力していることは紛れもない事実。
日ハムでの試験導入によって効果が認められ、NPB全体でもピッチクロック導入に向けて一気に舵が切られる可能性もあります。そうなれば、メジャーでの導入実績も相まって早ければ2024年シーズンから…なんてこともあり得るかもしれません。
ピッチクロックとは”投球時間制限”。試合時間短縮に大きな効果アリ!
メジャーで導入が決定し、日本でも話題に登る機会が増えた「ピッチクロック」について掘り下げてきました。
ピッチクロックとは”投球時間制限”のことであり、大まかな内容として
- ピッチャーは走者なしの場合で15秒、ありの場合で20秒以内で投球
- バッターにも設けられ、制限時間の8秒前までに打席に入っていなければならない
- 違反するとピッチャーにはボールカウント1つ、バッターにはストライクカウントが1つ追加される
といったところです。
NPBでは導入に向けてまだ具体的な動きは見られませんが、これからの野球界の未来のためにも必要なルールとなる可能性が高いと言えそうです。
我々ファンも、いざ導入されたときに慌てないよう、今のうちから頭の片隅には置いておきたいですね。