Twitterトレンドワードに「ナリタブライアン」の文字が踊り、これはウマ娘関連だな、と思ったら案の定でした。
「ナリタブライアン実装!」とか書かれているんですが、「実装」の意味も分かりません…。ほんとにゲーム自体やったことがないので…。
でもきっといい事なんだと思いますし、ナリタブライアンがトレンドワードに上がるなら、見過ごすわけにはいかない!ということで第5回です。
プロフィール
それでは早速、ウマ娘「ナリタブライアン」のプロフィールを見てみましょう。
無双の走力を誇る、強大で無愛想な一匹狼。
その走りはトレセン学園内で畏怖されており、本人も恐れられている。走り以外に興味はなく己がうちの渇きを癒すことだけを求めて疾走する。
ビワハヤヒデの妹であり、意外にも生徒会において副会長をつとめている。
なるほど。
それでは一つ一つ比較していきましょう。
無双の走力を誇る
競走馬ナリタブライアンというのはおそらく、史上最強馬ではありません。
競馬の歴史上、たった8頭しかいないクラシック三冠馬という栄誉を持ち、弾丸の如くターフを駆け抜けた名馬中の名馬であることは間違いありません。
ただ、その強さが瞬間的だったことが最強馬論争に加わりにくい原因です。
ウマ娘プロフィールでいう「無双の走力」を見せつけた期間は、はっきり言って長くありませんでした。
強大
ただし、プロフィールの「強大」という表現がしっくりくるほど、その瞬間最大風速は強烈なものでした。
クラシック三冠を制したレース(皐月賞、日本ダービー、菊花賞)で、2着馬につけた着差は順に3馬身半、5馬身、7馬身、です。
この着差は全8頭の三冠馬の中でも最大です。まさに強大な走り。
と言っても決してスピードでグングン突き放すというスマートなイメージではなく、他馬をなぎ倒していく無骨なイメージ。
マリオカートをやったことある人にしか伝わらないかもしれませんが、アイテムで「キラー」ってあるじゃないですか。
あの感じです。他馬を吹っ飛ばしながら突き抜ける…ナリタブライアンの黒鹿毛という毛色も手伝って、まるで弾丸に撃ち抜かれたような衝撃をファンは受けたのです。
無愛想な一匹狼
ナリタブライアンには「愛想」という概念はなかったと思います。
ただクラシック三冠レースで与えた衝撃が強すぎて、誰も近寄れなくなったという面はあるでしょう。
事実、当時はライバルと呼べるような相手もおらず、孤高の存在というイメージでした。
友達も居なかったんじゃないですかね。
周りは恐れ多くて話しかけられなかったと思います。一匹狼であることを本人が望んでいたかは分かりませんが。
「畏怖され、恐れられる」というプロフィール通りの存在だったと思います。
走り以外に興味がない
ナリタブライアンが己の魅力を示すことができるのは「走り」だけだったと言えます。
しかしストイックというのとはまた違う。
おそらく極度に不器用だったのだと思います。
ナリタブライアンは三冠を達成後、年末のグランプリ有馬記念も完勝して最強馬の名を欲しいままにします。
しかし年が明けた春先、、股関節を痛めて休養に・・・
ナリタブライアンが狂おしいまでの強さを見せたのはここまででした。
復帰後はあの弾丸のようなパワフルな走りは鳴りを潜め、二回りほど縮んでしまったかのように小さくまとまってしまいます。
間違いなく、股関節を痛めたのが原因です。
ただ、そのケガを理由にすることを彼は絶対にしませんでした。
いや、もちろん馬は喋れませんからその関係者ということになりますが、ブライアンの性格上、喋れたとしても絶対に言わなかったと思います。
だからイジれないんです。
負けた後に「あー、脚痛ってぇー」とか言ってくれたら「大丈夫っスかー?」って声をかけられる。
でもそこを「すみません、私が不甲斐ないだけです」と言われたら、もう茶化せない。
不器用なブライアンは、走って結果を残すこと以外に、自分の魅力をアピールする術を知らなかったのです。
己がうちの渇きを癒すことだけを求めて疾走する
晩年の彼の走りにあったのは他でもない「悲壮感」です。
クラシック三冠馬として、現役最強馬として、その走りで競馬界を引っ張らねばならないという悲壮感。
そんな無理をすることないんです。あなたはもう十分ファンを楽しませたよ、競馬界に貢献したよ、と。
しかし彼の耳にその声は届きませんでした。
「渇きを癒すための疾走」ーーーまるで砂漠で水を求めるかのごとく、命をすり減らす競走生活が続いたのです。
最後の意地
そのままナリタブライアンの炎は消えてしまったのかというと、そうではありません。
5歳(旧6歳)になったナリタブライアンは、阪神大賞典というレースで一つ年下の名馬マヤノトップガンと歴史的なマッチレースを繰り広げます。
最後の直線、ビッシリと横並びで意地のぶつかり合い。私は後にも先にも、これ以上の接戦を見たことがありません。
結果はハナ差でブライアンの勝利。ブライアン最後の意地を見せたレースでした。
ナリタブライアンが勝つときは2着馬をぶっちぎるレースばかりだったのは先述の通りです。
しかしながらこの阪神大賞典の「ハナ差」にこそ、ブライアンの魂が込められていると思います。
それは己に課せられた使命と、その期待に応えられない苦悩に打ち勝ち「負けてたまるか!」という感情を爆発させて得た勝利だからです。
勝つことは簡単ではないけれど、自分は勝たなければいけない…それがファンのため、競馬界のため、と思っていたであろうナリタブライアン。
そんな彼が、本当に大事なのは「自分の勝ちたい気持ちなんだ」と気付いた瞬間だったのではないかと思います。
もっと器用に立ち回れば、強い馬であることは間違いないのだからもっと楽ができたかもしれないのに…。
でもそんな強くて不器用なナリタブライアンが私は大好きです。
ドリームマッチとシャドーロール
プロフィール比較に戻りますが「ビワハヤヒデの妹」…まあ実際はオス馬なので弟ですが、これ以上に最強の兄弟(ウマ娘的には姉妹)は世界的に見ても例がありません。
兄も弟も年度代表馬(いわゆる年間MVPみたいなもの)を受賞したこの2頭の対決はついに実現しませんでしたが、競馬ファンにとって「夢の対決」として永遠に語り継がれるのです。
生徒会うんぬんはアニメの設定ですが、もしナリタブライアンが生徒会長になったら、真面目にいろいろ考え過ぎてノイローゼになってしまうでしょう。だから副会長ぐらいのポジションが一番いいと思います。
なお、ウマ娘ナリタブライアンの鼻に貼ってあるテープは、競走馬ナリタブライアンも装着していた「シャドーロール」という矯正器具に由来しています。
これは馬の鼻先に装着する器具で走りに集中させる効果を持っているのですが、白いシャドーロールはいつしかナリタブライアンのトレードマークとなりました。
一時はこれを装着しているナリタブライアンにあやかろうと、多くの競走馬がシャドーロールをつけようとしたため生産が追いつかなくなったとか…。
そしてブライアンが魂を燃やして得た最後の勝利の着差は「ハナ」。
鼻先のシャドーロールにもナリタブライアンの魂が宿っていたのかもしれません。
最期
ナリタブライアンは引退からわずか2年後、病気によりこの世を去っています。
競走生活で神経をすり減らし過ぎたのでしょうか…残念でなりません。
私に競馬の楽しさと儚さを教えてくれた、史上最強ではないかもしれないけど私にとっての史上「サイコー」馬ナリタブライアン。
彼が天逝したすぐ後、追悼企画を掲載した競馬雑誌に踊ったコピーでこの記事を締めたいと思います。
『絶対に忘れない!オレ達の最強馬・ナリタブライアン!』(N)