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ここにはそれがある。
あした使えるはなしのたね
2019年発行

「ラップバージョン」のはなし。2019.4.18

何かと世間を騒がす「失言」の数々。最近はちょっとした表現やニュアンスの違いでとんでもない批判が飛んできて、結果的に身を滅ぼす人が多い印象です。

ただの揚げ足取りにしか見えないケースも多々あり、こうした傾向に辟易している方もいらっしゃると思いますが、これは実は日本らしさが強く現れている現象でもあります。

日本には「言霊」という言葉があります。これは“言葉に宿ると信じられた霊的な力のこと”で、声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされています。

従って日本人は、文字はそれほどでもないのに対し、口から出す言葉には非常に注意を払います。

これは「国歌」を見ると顕著です。日本の国歌「君が代」は、分かりやすく言うととても「柔らかい」歌詞です。その説明まで入れると長くなるので割愛しますが、海外の国歌の歌詞はエゲツない事この上ないのです。

フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」の歌詞の和訳はこうです。『いざ祖国の子らよ!栄光の日は来たれり!暴君の血染めの旗が翻る!戦場に響き渡る獰猛な兵等の怒号!我等が妻子らの命を奪わんと迫り来たれり!』―――えぇ・・・フランス人はこれを声高らかに歌っているんですか・・・?血染めとか、暴君とか、怒号とか、あり得なくないスか?中国もヤル気マンマンです。

『いざ立ち上がれ 隷属を望まぬ人々よ!我等の血と肉をもって我等の新しき長城を築かん!中華民族に迫り来る最大の危機、皆で危急の雄叫びをなさん!』―――これも「血と肉」だとか「雄叫び」だとか物騒な言葉が出まくりです。あと「迫り来る最大の危機!」ってお前ら常に最大の危機なんかい!とツッコミを入れたいですね。いつまで経っても被害者意識の強い中国らしい歌詞だと思います。

そして天下のアメリカ国歌ですらこんな感じ。『砲弾が赤く光を放ち宙で炸裂する中、我等の旗は夜通し翻っていた!ああ、星条旗はまだたなびいているか?自由の地 勇者の故郷の上に!』―――もうバトル感、RPG感が満載です。勇者の故郷とか、ドラクエの世界ですか?ってなもんです。主人公気取りもいいとこです。

こういう歌詞の歌を、海外では子どもたちも普通に歌っていることになります。むしろ日本の「君が代」の歌詞の方が、世界では異質と言えます。

どちらが良いか悪いかは分かりません。ただ「君が代」の柔らかな表現に慣れ親しんだ日本人が、ちょっとした表現や言葉のチョイスに過敏に反応するのは何となく理解できることではあります。トランプ大統領なんて、日本だったらとっくの昔に問題発言で失脚しているはずです。と、いうことを日本人なら分かっているはずなのに、懲りもせず失言を繰り返す方に天罰が下るのは、まあ致し方ないことですね。

逆に言えば日本人は、口から出た言葉に激しく感化されるわけですから、それを有効利用してやればいいんです。だから国歌も「君がYO!」というラップバージョンを作って子どもの頃から歌わせればきっともっと明るくて元気な国に・・・はい、誰かに怒られそうなのでこの辺でやめときます。(N)