東京都大田区を拠点に活動するバリアフリー社会人サークル「colors」。
その500日間を追ったドキュメンタリー映画が「ラプソディ オブ colors」です。
映画は5月29日より公開が始まり、現在は一部の映画化のみの上映ですがいずれは全国に順次公開されていくとのことです。
この記事では映画「ラプソディ オブ colors」についての情報と、「colors」という団体について、そして映画監督である佐藤隆之氏に迫ってみたいと思います。
もくじ
「colors」とは?
活動内容
バリアフリー社会人サークルとして2014年から活動している団体で、身体障害の有無や年齢・性別・国籍問わず、さらにはちょっとグレーな経歴を持つ人たちも集まり、毎月10本ものイベントを開催しています。
そのイベントのコンセプトは「誰もが平等に、同じ立場で参加できるイベント」。
その内容は多岐に渡っていて、大学教授による講習や音楽フェス、飲み会などなど・・・年間のべ800人が来場するのだそうです。
個性豊かなメンバー
colorsの代表は自身も頚椎損傷と脳の血腫による障害者で、電動車椅子を使っている石川悧々さん。
そして大田区の職員を3年半で退職し、障害福祉NPO法人を立ち上げた中村和利さん。
colorsの運営はこの2人が中心となって行っており、そこには様々な人たちが集まります。
重度の知的障害者や、難病を抱え車椅子で生活をしながら作曲やYouTube配信を続ける人、脳性麻痺という障害を持ちながらも障害者風俗の道に飛び込んだ人・・・実に多彩な面々が集っています。
『ラプソディ オブ colors』という作品
映画はこの「colors」の500日間に及ぶドキュメンタリー形式となっています。
そしてこの映画の最後には「colors」のメンバーたちみんなの居場所である建物が、大家の都合で取り壊されてしまうというという事態に陥るようです。
そんなラストのネタバレがすでにされているということは、そこに至るまでの過程にこそ、この映画の本質があるのではないかと思ってしまいます。
監督・佐藤隆之氏
この映画を撮った「佐藤隆之」さんという監督は、大林宣彦、黒気和雄、鈴木清順など、錚々たる映画監督のもとで助監督を務め、テレビドラマなども約20本を監督しています。
しかしそんな輝かしい経歴を放棄するかのように、45歳で何とタクシードライバーに転職をします。動機は分かりません。
そしてその後個人ドキュメンタリーに転身を遂げ、2018年5月から「colors」への密着取材を始めたのです。撮影した素材は実に1,000時間以上に及んだと言います。
映画の上映時間は108分間なので、ほとんどが使われていないことになりますが、圧倒的な映像量の中から選りすぐられた108分に何が描かれているのか・・・大変興味深いです。
そして佐藤隆之監督自身もまだまだ謎が多い人物です。分かる範囲でプロフィールを紹介しておきます。
1961年山形県鶴岡市生まれ。関西で育つ。
大阪芸術大学映像計画学科中退。
在学中に8mm作品を3本製作。21歳からフリーの助監督として大林宣彦、黒木和雄、鈴木清順、廣木隆一、堤幸彦などの監督作品に参加。
34歳、テレビ東京「きっと誰かに逢うために」で監督デビュー。深夜枠テレビドラマ、DVD作品、ネット配信作品など約20本で監督脚本。
オリジナル脚本がサンダンス映画祭、函館イルミナシオン映画祭にノミネートされる。
45歳、タクシードライバーに転職。
その後、個人製作ドキュメンタリーに転じる。
2016年秋ドキュメンタリー作品『kapiwとapappo〜アイヌの姉妹の物語〜』を渋谷ユーロスペース、レイトショーにて公開。本作が長編ドキュメンタリー2作目。
東京・吉祥寺在住。
続報があればまた追記をしていきたいと思います。
満員御礼で入場できない映画館も・・・
5月29日から公開となったこの作品ですが、コロナ禍で収容人数制限があるとはいえ満員で入場ができなかった劇場もあったようです。
反響が大きければ公開される映画館も増えてくるはずです。我々の目にも触れる機会が是非とも訪れてほしいものです。
映画ポスターに込められた思い
「ラプソディ オブ colors」の映画ポスターにはこんな一文があります。
”<障害>と<健常>のあいだ すべての人がマイノリティ―――
私たちはつい、障害者である彼らを「マイノリティ(少数派)」と決め付けてしまいます。多数派である我々が手を差し伸べてやらねばならないと。
ところが障害者と健常者で何が違うのか。
本当に平等な立場として扱うのであれば、多数派・少数派と区別すること自体がおかしいのではないか。
本当に深いところでは、誰もがこの世にたった一人の「少数派」なのではないか。そしてそれこそ真の平等なのではないか。
いろいろなことが、この一文から想起されます。
まとめ
注目作「ラプソディ オブ colors」について解説してきました。
と言ってもその内容については非常に謎めいているというか、見えてこない部分が多い作品です。
だからこそ、そこに描かれているのは人間の”ありのまま”なのではないかと思わされます。
ボーダレス、ジェンダーレスなど差別や区別について様々な要素が声高に叫ばれる昨今において、人間の本当の境界線とは何なのかを考えさせてくれる作品ではないでしょうか。