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あした使えるはなしのたね
2020年発行

「過度な最適化」のはなし。 2020/09/17

私が占いを嫌いな理由は整合性が取れないことです。

星座占い、血液型占い、動物占い、その他数多く存在する種類の占いが、テレビや雑誌その他諸々の媒体で取り扱われ、しかもそれは週間だったり月刊だったり今日一日限定の話だったりする。

例えばA型の人の恋愛運が今日絶好調だったら、その人の週間の星座占いでも恋愛運が絶好調の日がないとおかしい。

B型の人の今日のラッキーアイテムが「イボのついた軍手」だったら、それ以前に発表されていた今週の星座占いでも「イボのついた軍手」が登場してないとおかしいんです。

そうやって考えていくと、全部の占いの言っていることがガッチリ合わさったとき、つまりすべて占いの整合性が取れたときに行動を起こせばすべて上手くいくということですよね。

すべての占いのラッキーアイテムが「スパイダーマンのマスク」で、すべての占いのラッキーソングが「あいみょん」で、すべての占いの恋愛運が絶好調の機会が訪れたとき、スパイダーマンのマスクを被ってマリーゴールドを流しながら好きな人に告白すれば、きっと付き合うことができるでしょう

―――って、お察しの通りそんな風にすべての占いの整合性が取れることはほぼ100%ありません。

まあそれ以前にそんな状態で告白をしたって怖いだけですが…。

これが「過度の最適化」です。

何か行動を起こすとき、自分が「最適」だと思う条件がすべて揃うことなどあり得ないのに、人はどうしてかそれが揃っている状況を待ってしまう。

これでは何ひとつ行動を起こすことはできません。

「ゲン担ぎ」という言葉があるように、とかく日本人は事前に状況を揃えたがります。

過度に最適化をしないと安心して行動が起こせない。

何でもまずは始めてみることが成功に向けて最も期待値の高いアクションなのに…。

占いの運勢やラッキーアイテム、ゲン担ぎなんてものは景気付けのための装飾品でしかなく、そんなものを一つでも待つこと自体が必要以上に最適化を望んでいると言えます。

そして個人的に何よりも恐れているのは、コロナウイルスからの解放に対して、世間が「過度の最適化」を望んでいないか、という点です。

この世界からコロナウイルスが完全に消えてなくなるということは永遠にないのに、副作用の全くない治療薬が開発され、誰しもが安価でワクチンを接種できるようになり、政府が「みなさんもう大丈夫ですよー!」と宣言するのを待つ

―――それまでに一体何年かかるの?って話です。

世の中は常に暫定的です。

そこから良くなることもあれば悪くなることもある。

完全に最適化されることはありません。

ここは逆に、今までが過度に最適化されすぎていたと考えるべきです。

この世界の運気が絶好調だった期間はもう終わりを迎えたのだ、と。

ある種今まで我々は、占いのような非科学的な何かの恩恵を受けていたのかもしれません。

ところが今回のコロナウイルスで、占いや予言の類は一切役に立たないことが証明されました。

こんな世界的な大事件すら言い当てることができなかったのですから。

ありのままの状態を受け入れ、自ら一歩を踏み出す強さを、これからは求められることになるのです。(N)