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2021年発行

マルクス・レームのプロフィールを紹介!義足のパラリンピアンがオリンピック出場へ?メダルの可能性は?

ドイツ・オリンピック委員会は、東京パラリンピックの陸上男子走り幅跳びで3連覇がかかる“義足”マルクス・レーム選手がオリンピックにも出場できるよう、IOCに特例の許可を求めたと明らかにしました。

「義足」ということは当然のことながら健常者ではないので、出場するのはパラリンピックになるはずですが・・・

この記事は、

  • マルクス・レーム選手のプロフィール、経歴
  • パラリンピアンであるはずの彼がなぜオリンピックへ?
  • 実際のジャンプ映像

といった内容でお送りしていきたいと思います。

マルクス・レーム選手のプロフィール

マルクス・レームは義足の走り幅跳び選手です。障がい者の大会では向かうところ敵無しの最強ジャンパーです。

Markus Rehm(マルクス・レーム)

生年月日 1988年8月22日(32歳)

国籍 ドイツ

身長 185cm

競技 走り幅跳び

ニックネーム 「ブレードジャンパー」

右足の膝下を切断

彼はなぜ義足になってしまったのか・・・2003年、彼が14歳のとき、その事故は起きました。

ウェイクボードの練習中、船のスクリューに右足が巻き込まれ、膝から下を切断するという大怪我を負ってしまったのです。

事故から2年後、彼は義足をつけて陸上競技へと挑戦します。そして走り幅跳びでその才能を開花させました。

パラリンピック2連覇中

レーム選手はすでに、2012ロンドン大会、2016リオ大会と、パラリンピック走り幅跳び競技で2大会連続金メダルを獲得しており、東京大会でも優勝間違いなしとまで言われています。

パラアスリートの世界ではすでに敵はおらず、2015年10月、カタール・ドーハで行われたIPC(国際パラリンピック委員会)陸上競技世界選手権では、2位の選手に1m以上の大差(!)をつける圧倒的な強さを見せ大会3連覇を飾っています。

このときに記録したジャンプは8m40でした。

健常者の大会でも・・・

レーム選手が世界を驚かせたのはこの2015年の圧勝が初めてではありません。

2014年7月、ドイツ・ウルムで開催された国内最高峰のドイツ陸上選手権に出場し優勝。「ドイツ王者」に輝いています。

何がすごいって、このドイツ陸上選手権はパラアスリートの大会ではないんです。オリンピック出場経験もある選手が参加する、「健常者の大会」だったのです。

高まる期待

レーム選手のこの活躍は「パラリンピアンがオリンピアンを越えた!」と陸上界を揺るがしました。

しかも、このドイツ陸上選手権でマークした8m24は12年ロンドンオリンピックなら銅メダルになる記録。「オリンピックとパラリンピック両大会でのメダル獲得」という、前人未到の大偉業への期待が高まったのです。

オリンピックへの挑戦

レーム選手が健常者の大会でも互角に渡り合える・・・どころか勝利してしまうほどの実力者であることはもう疑いようがありません。

そうなると、健常者の大会の最高峰であるオリンピックへの挑戦が現実味を帯びてきます。

オリンピックへ懸けるレーム選手の思い

レーム選手はオリンピックへの挑戦についてこう語っています。

「僕はパラリンピック・アスリート。パラリンピアンであることを誇りに思います。ただ、僕はオリンピアンとパラリンピアンをもっと近づけたい。そして、パラリンピアンも素晴らしいアスリートであり、素晴らしい結果を出している選手がたくさんいることを多くの人に知ってもらいたいだけ。オリンピックという世界最高峰の大会で健常の選手と戦うことは、その大きなチャンスの場だと思っています」

自分がパラアスリートであることに誇りを持った上で、その存在を広くアピールしたいという思いがレーム選手にはあります。

決して功名心や射幸心でオリンピック挑戦をしようとしているわけではないことが窺えます。

また彼は、自ら義肢装具士の資格も取り、装具職人としても障がいを負った人たちを支える活動もしています。

周囲もその挑戦を後押し

そんなレーム選手がオリンピックに出場できるよう、冒頭で述べたとおりドイツ・オリンピック委員会がIOCに働きかけるなど、周囲もその挑戦を厚くサポートしています。

実は2016年・リオ大会の際にも、レーム選手はオリンピック出場を目指しIAAF(国際陸上競技連盟)に許可を求めましたが却下されています。

レーム選手のオリンピック出場を阻む要因として渦巻いているのは・・・

「義足の有利性」の議論

レーム選手のあまりの大活躍に対して沸きあがったのは「義足のほうが有利なんじゃないか」という抗議です。

パラアスリートが装着する義足はカーボン繊維製で、激しい運動に耐えうる剛性と弾力性を持っているため、この性能が跳躍に有利に働くのではないかという声が後を絶たないのです。

そしてこの「義足の有利性」については未だに答えが出ていません。

義足の性能がジャンプにアドバンテージを与えることはない、という証明ができない以上、レーム選手は正式にオリンピックに出場することはできないのです。

これを今回の東京オリンピックで、IOCが”特例”として認めるかどうかに注目が集まります。

レーム選手、大ジャンプの映像

レーム選手は現在32歳。アスリートとして円熟期を迎えているようで、つい先日も自己ベストを更新したばかり。

そのジャンプがこちら↓

何と記録は8m62cm!!

メダルの可能性

これはもう文句なしにオリンピックでも金メダル級の大ジャンプです。というか世界新記録!なのです。

2016年・リオデジャネイロオリンピックの男子走り幅跳びで金メダルに輝いたジェフ・ヘンダーソン選手の記録が8m38cmですから、これを24cmも超えていることになります。

まとめ

義足のジャンパー、マルクス・レーム選手について解説してきました。

メダルに懸ける情熱は、健常者であろうと障がい者であろうと変わることはないでしょう。そしてその垣根が本当に必要なのかどうかというのは永遠に答えが出ないかもしれません。

今後どのような結論が出るかは分かりませんが、レーム選手はその垣根をいとも簡単に飛び越えてしまうスーパーアスリートであるという事実だけは認識しておきたいところです。