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2022年発行

悪影響が多い体育座りはなぜ定着した?その理由を解説!海外ではどうしてるの?

体育の授業や集会でおなじみの「体育座り」が、体に悪影響だとして話題になっています。

この座り方は日本でしか見られないものだそうで、内臓を圧迫し、座骨の痛みが出るなど体には悪影響が多いという指摘があるとのことです。

これに対しネット上では

  • 当たり前のようにやってたけど…
  • そもそも何で定着したんだろ?
  • 海外ではどうしてるのかな

などの声が挙がっています。

この記事では、体に悪影響が多いとされる体育座りがここまで全国に普及した背景・理由、そして海外ではどうしているのかについても迫ってみようと思います。

「体育座りが悪影響」に対する世間の声

https://twitter.com/hiroro_bx92/status/1523240285526192128
https://twitter.com/yukun_1201/status/1523246577657126913

やはり苦痛を感じていた方が多かったことが分かります。

そして世代を問わず、学生時代の全校集会などで体育座りは当たり前だったことも伺えます。逆に「体育座りをしたことがない」という方を探すほうが日本では難しいでしょう。

どんな悪影響がある?

では実際にどんな悪影響があるのかも改めて触れておきましよう。

国際医学技術専門学校の理学療法士・増田一太さんによる2014年の調査によると、主に関西地方の小学5年~高校3年の男女939人の12.7%が腰痛を訴えているとのこと。

また、座った時に痛みを訴えるケースは66.4%で、そのうち体育座り時に痛みを感じたのが52.9%だったとされています。

実際、痛みを感じた経験のある人がほとんど

上記の調査に頼らずとも、長時間の体育座りで痛みを感じた経験がある方がほとんどではないかと思います。

とにかく

ケツが痛い!

これに尽きます。

腰痛に発展するのはその後なのでしょうが、兎にも角にも痛みを感じる座り方が体にいいとはどう考えても思えません。

ではなぜそんな座り方がここまで全国的に定着してしまったのでしょうか。

体育座りが全国的に定着した理由

それではなぜ体育座りがここまで定着したのか、その背景・理由に迫っていきます。

元凶は文部省発行の手引き

体育座りは1965年に文部省(当時)が、学習指導要領の解説書として発行した「集団行動指導の手引き」の中で

「腰をおろして休む姿勢」

として写真付きで示されてから広まったとされます。

↑実際の中身

この写真を見た全国の学校が、省スペースで手遊びがしにくく「行儀よい姿勢」というイメージを抱いたため、そこから爆発的に浸透していくことになりました。

「なぜ」この姿勢がいいかは示されていない

しかし、この手引きではあくまで「集団行動の中で腰をおろして休む姿勢」として紹介されているだけで、「なぜ」この姿勢がいいのかは全く示されていません。

例えば「この座り方だと集中力が増す」とか「話が入ってきやすくなる」など体育座りを推奨する理由が示されていればまだ分かるのですが…

学校のルールというのはこのパターンが非常に多いですね。

なぜそのルールが存在するのか、誰も理論的に説明できない。

髪型や服装に関するルールのほとんどがこのパターンと言えます。

戦前・戦中教育の名残り、時代遅れも甚だしい

体育座りが「集団行動指導の手引き」で紹介されたのは先述の通りですが、この「集団行動指導の手引き」自体が戦前・戦中教育の名残り満載で時代遅れも甚だしいものなのです。

日本は戦後、教育の現場から「教練」など軍事色の強いものが一掃されます。

それによって学校の集団行動には無秩序がもたらされ、その対策として生まれたのが「集団行動指導の手引き」でした。

しかし、1965年(昭和40年)に作成されたこの手引きで示された行動様式は、戦前の行動様式とほとんど変わっていなかったと言われています。

集団行動について深い議論や十分な吟味もされない中、およそ付け焼き刃で生まれた時代遅れのルールに、未だに従っているのが体育座りだと言えます。

海外ではどうしてる?

日本にしかないという「体育座り」。では海外ではどのようなスタイルが取られているのでしょうか。

海外にも全校集会はある?

そもそも海外にも全校集会があるのかというと、それは日本と同様にあるようです。

アメリカやカナダでは“Assembly(アセンブリ)”と呼ばれる集会があり、内容は校長先生の話何かの大会の激励会、成績優秀者の発表など、この辺りは日本と変わりありません。

座り方は全然違う!

内容は同じような海外の全校集会ですが、生徒たちの座り方は日本と全然違います。

クラスごとにきっちり分けられ、背の順など並び順まで決められているのが日本ですが、海外はそこまで厳密な決め事はありません。

体育館に“Bleachers(ブリーチャス)”と呼ばれる観客席のような長椅子が設置されている学校が多く、そこに各々自由に座って話を聞くのが一般的だそうです。

こんな感じ↓

固い床の上に直に座らされ、痛みに耐えながら話を聞かされる日本とは大違いです。

集会の時間も日本は長過ぎる!

日本の学校の集会はとにかく長いという印象です。

大体、校長先生の話なんてほとんど誰も聞いていません。

さらに会が入学式や卒業式ともなると、普段は顔も見たことのないPTAのオッサンのダラダラした中身のない話など、子ども達には全く意味のない時間がただ過ぎていきます。

そこに体育座りの苦痛までもが重なっているわけです。

改めて考えると、全校集会の様式自体が日本はおかしいと言えるのかもしれません。

悪影響が多い体育座りが定着した理由!それは戦前・戦中教育の名残り

悪影響が多いと話題になった「体育座り」、その定着の理由や海外との比較などを行ってきました。

体育座りの起源は、昭和40年に当時の文部省から発行された手引きにあり、それは戦前や戦中の教育内容が色濃い中で作成されたものでした。

その流れを未だに汲んでいるのは明らかに時代遅れであり、これは今後改革が必要な部分でしょう。

また、海外にも全校集会はあるものの、生徒たちが苦痛を感じないような環境で行われていることがお分かりいただけたと思います。

無駄な規律や古くからのしきたりが多い日本。体育座りはほんの氷山の一角で、こうした「意味や目的のないルール」はまだまだ山ほどあるのでしょうね…。