9月26日の放送をもって、46年の歴史に幕を下ろすアタック25(朝日放送テレビ)。
一般の視聴者参加型のクイズ番組としておよそ半世紀に渡って愛された長寿番組が、ついにその役目を終えます。
ネット上ではその終了を惜しむ声で溢れ、打ち切りとなった理由についてもあれこれ議論がなされているようです。
この記事では、アタック25が打ち切りとなった理由について、視聴率やコロナなど主な原因とされている点以外の側面を掘り下げてみようと思います。
もくじ
アタック25打ち切りを惜しむ声
長い歴史を持つ番組だけに、多くのファンがいるのは当然のことと言えます。
それでも同番組を打ち切りにした理由について、報道では次のように説明がされていました。
アタック25打ち切りの理由・報道によると…
打ち切り理由①若年層の視聴率獲得のため
アタック25自体の視聴率は5~6%台と堅調に推移していたようです。
ところが朝日放送の山本晋也社長が記者会見で
若い世代にもっと見てもらえるよう番組編成を見直した
と語った通り、若者向けの番組を作ろうという流れの中で40代、50代以上の視聴者が多いアタック25は打ち切りの対象となってしまったようです。
2021年発表のデータで、平日にテレビを15分以上視聴する人の割合が16~19歳で47%(前回比24ポイント減)と低迷するなど、“若者のテレビ離れ”が顕著に表れ、その対応を迫られたとしています。
若者向けの番組を放送するために、アタック25が犠牲になった格好です。
打ち切り理由②コロナ禍で参加者集めが困難に?
Twitter等では、コロナ禍で一般からの参加者を募るのが困難になったことも打ち切りに拍車をかけたという見方もあります。
確かに参加者の県をまたぐ移動や、大人数を集めての予選会など、コロナ禍で難しくなった部分があるのは間違いないでしょう。
以上がアタック25の打ち切り理由として主に言われている点です。
しかし実際、視聴率は高いとは言えないまでも堅調、コロナ禍とはいえ一般参加者は本番ならばわずか4名。
どちらもここまで歴史と伝統ある番組をあっさり打ち切りにするほどパンチのある理由とは言えない気もします。
アタック25打ち切りの背景には、これら以外にも視聴者参加型番組ならではの理由があるようです。
アタック25打ち切りの「意外な」理由
アタック25最大の魅力は「自分もいつか参加したい!」と思える“視聴者参加型”という番組形態です。
しかしそこにこそ、打ち切りを決定づける理由となる要素があると言われます。
参加者への手厚い配慮が必要
一般の視聴者が参加する番組には、テレビ局が想像以上の手厚い配慮をしなければいけません。
確認や誘導、緊急対応など、収録前後のスタッフの労力は相当大きいようです。
ひどいときには「収録当日来なかった」や「後日『やっぱり放送しないでほしい』と言われた」などのケースも少なくないといいます。
これに関してはテレビ解説者・木村隆志氏が、同じく視聴者参加型クイズ番組であった「99人の壁」についてこう語っています。
「やはり毎回の収録に100人近い一般人をそろえるのは難しかったはずです。タレントなら必ず収録に行きますが、一般人は『予定が入った』『家庭の事情』などの理由でドタキャンもあれば、連絡すら入れずに来なかった人もいたようですから。毎回半数前後が北海道から九州まで日本全国から自費で参加していましたし、私が知る限り『99人の壁』に出たい人はたくさんいますが、収録当日に来てもらえなかったら意味がありません。この番組はスタッフが一般人への信頼をもとに制作していましたが、その性善説のような姿勢が仇(あだ)となったしまった感があります」
マイナビニュース
一般の参加者となると、ここにさらに個人情報保護や、放送前の情報漏洩などの問題もついて回ります。
芸能人を集めて番組を作る場合と比べて異常なほどきめ細かい配慮が必要になり、そこには当然、時間も手間も人もお金も必要になるのです。
撮れ高や笑いの不足
アタック25はどこまで行っても一般参加者が主役であり、当たり前のことですが彼らが撮れ高や笑いを意識することはありません。
演出面でもそれは変わらず、例えば「前半大きくリードしていた解答者が後半急にピンチになる」や「パネルの取り方で一気に形勢逆転」といった“ヤラセではない範囲の演出”が生まれることも少ないでしょう。
どんなに編集で頑張っても限界があり、そうなるとアタック25最大の魅力が逆に最大の弱点となってしまうのです。
現代の視聴者は少しでも「つまらない」と思ったら、チャンネルを変えるどころかすぐにゲームやスマホに流れてしまいます。
視聴者をテレビに繋ぎとめておくための盛り上がりを、タレントでも芸能人でもない一般参加者に求めなければいけないのは少々酷な話です。
現にアタック25も晩年はタレントさんの参加が非常に増えていました。
「視聴者参加型」という最大の魅力が逆効果に…
どんな番組形態であれ、しっかりと視聴率が獲得できスポンサーの求める層にCMが届いていれば問題はないはずです。
しかし前述したように、アタック25の主な視聴者層は高齢層、さらにコロナ禍でCMにかけられる予算も削られ、今まで以上にスポンサーの見る目は厳しくなっていたに違いありません。
そうなると「視聴者参加型」というアタック25最大の魅力が、逆に番組打ち切りのトドメとなってしまった可能性は高いと思われます。
アタック25意外な打ち切り理由は「視聴者参加型」という番組形態にアリ
アタック25の意外な打ち切り理由は「視聴者参加型」という同番組最大の魅力にあるのではないかということで解説してきました。
長寿番組というのは簡単に生まれるものではなく、その中でもアタック25は46年という超歴史的な番組でした。
それが終了するというのは単純にとても寂しい思いがしますが、今後も「視聴者参加型」の番号に対する風当たりは強いものになることが予想されます。
若者のテレビ離れが深刻だと言われて久しいですが、だからといって単純にアイドルやタレントがギャーギャー騒ぐだけの”若者向け”番組を作ればそれでいい、というのは違う気がします。
老若男女、いろいろな人が楽しむテレビというメディア。
そこにこそ、「多様性」が求められるべきだと思います。