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あした使えるはなしのたね
2015年発行

「万里の長城を盗む」のはなし。2015.7.16

万里の長城 ――― 中国に存在する、秦の始皇帝が構築した城壁の遺跡。ユネスコ世界文化遺産に登録されており、その全長は21,196.18kmあったとされています。

現在でも約6,200kmの人工壁が残っています。ところが・・・。

中国紙・京華時報が先日、この万里の長城の3分の1が消失していると伝えました。およそ1,960kmも短くなってしまったというのです。

もちろん何千年もの歴史を持つ建造物なので、風雨による侵食などはあって当たり前。しかし消失の原因はそうした自然環境によるものだけでなく、「人的破壊」の影響も大きいという驚きの事実が!

何と、近隣の村人が、長城のレンガを盗みまくっているのです。貧しい村人たちは長城からレンガを抜き取り、家を建てるために流用。

村内に長城が通っている地域では、もう昔から当たり前のように繰り返されていたんだとか。さらに、長城のレンガの中には文字が入っているものがあるそうで、これを盗んで闇市などに持ち込むんだそうです。

おそらく建設をしていた当時、作業員が落書き程度に残した文字なのでしょうが、コレクターには高く売れるようです。

政府による管理もずさんだったようで、長城は植物にも侵食されています。レンガとレンガの隙間から植物が生え、これも長城の崩壊を加速化しています。

もう万里の長城はボロッボロなのです。保存状態が良いとされる部分は10%にも満たないといいます。中には壁さえなくなり、ただ土が盛り上がった土手になってしまった場所もあります。

完全な自業自得。何ともお粗末な、中国らしいと言えばらしい話です。万里の長城は世界最大規模の文化遺産であり、歴史的な建造物として、また観光資源としての価値は計り知れません。

それがこのまま放っておけば、完全に消滅してしまう可能性さえあるのです。一生懸命、来る日も来る日もレンガを重ねて長城を作った人たちは、自分達の子孫がそれを盗んでいく姿をどんな気持ちで見ているのでしょうか。

そして自国の重要な文化財もまともに守れない中国に、世界のインフラ整備の舵取りなど果たしてできるのでしょうか。(N)