1月11日、現役を引退することを発表した体操男子の内村航平氏。
2009年〜2016年まで五輪、世界選手権で8連覇を飾り、“絶対王者”と呼ばれた国民的ヒーローには、国民栄誉賞が授与されるのが確定的との見方が強まっています。
ネット上でも
- 是非とも彼に国民栄誉賞を!
- 内村航平は普通に国民栄誉賞だな
- むしろ何で今まであげてないの?
などの声で溢れています。
ということで内村航平氏の国民栄誉賞はほぼ間違いなし!…かと思いきや、内村氏には国民栄誉賞は授与されないとの見解が…
この記事では、内村航平氏に国民栄誉賞が授与されない理由について迫っていきます。
そこには過去に前人未到、超絶怒涛の実績を残した、ある男の存在がありました。
もくじ
内村航平氏に国民栄誉賞を!の声
まずは内村氏に国民栄誉賞を!という声をご紹介します。
もちろん内村氏の実績は十分すぎるものであり、今後彼のようなレベルの選手が果たして現れるのかどうか疑問に思うほどです。
国民栄誉賞が授与されるにふさわしい人物であることに異論はありません。
内村航平氏に国民栄誉賞が授与されない理由!
それでは内村氏に国民栄誉賞が授与されない理由について解説していきます。
内村航平を凌ぐ実績を持つ男・加藤澤男
若い世代の方は特にでしょうが、内村航平氏が日本男子体操史上最高にして最強の男だと思っている方は多いことでしょう。
しかし過去には内村氏を凌ぐ実績を残した、「加藤澤男」という伝説の男が存在します。
加藤氏の実績は次の通りです。
オリンピック
- 金 1968 男子床運動
- 金 1968 男子個人総合
- 金 1968 男子団体総合
- 金 1972 男子平行棒
- 金 1972 男子個人総合
- 金 1972 男子団体総合
- 金 1976 男子平行棒
- 金 1976 男子団体総合
- 銀 1972 男子あん馬
- 銀 1972 男子鉄棒
- 銀 1976 男子個人総合
- 銅 1968 男子つり輪
金メダル8個の衝撃!
ご覧いただいた通り、加藤氏の金メダル獲得数は驚異の8個!
これは現在でも日本人アスリートの中で最多の獲得数です。
体操競技は言うまでもなくオリンピックが最高峰の舞台。
そこで8個の金メダルを獲得しているということは、加藤澤男こそ日本男子体操史上「最強の男」と言っても過言ではありません。
ちなみに内村航平氏のオリンピックでの金メダル獲得数は3個です。(いや、十分すごい実績ですが)
加藤氏は国民栄誉賞をもらっていない
そんなとてつもない実績を誇る加藤澤男氏ですが、なぜか国民栄誉賞をもらっていません。
理由に関しては憶測の域を出ませんが、体操競技がメジャーなスポーツではないことや、派閥の問題(体操は日体大派閥が強く加藤氏の筑波大系は冷遇される)などと言われています。
しかしながら過去の授賞者には明らかにメジャースポーツと言えない女子サッカーのなでしこジャパンや、もらったことすら忘れられている将棋の井山裕太氏がいることを考えれば、加藤澤男氏が国民栄誉賞を授与されていないのは違和感しかありません。
国民栄誉賞は同じ分野の日本人の功績を超えることが暗黙の了解
国民栄誉賞の表彰規定は
「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること」
とありますが、これはつまり明確な基準はないということ。
ただし、該当するジャンルにおいて
同じ分野の日本人の功績を超えることが暗黙の了解
と言われています。
この基準に照らし合わせるなら、国民栄誉賞をもらっていない加藤澤男氏の功績を(少なくとも金メダルの数においては)上回っていない内村航平氏に、国民栄誉賞が授与されることはないと言えます。
これが、内村航平氏に国民栄誉賞が授与されないとする理由です。
当時とはレギュレーションが全然違うが…
金メダルの獲得数においては加藤氏を上回っていない内村氏。
しかしこれは当時と今とでレギュレーションが全然違うことも原因の一つです。
昔は1種目だけの参加は不可だった
内村航平氏は昨年の東京オリンピックで鉄棒競技のみに絞って参戦しました。
今は自分の得意種目だけに的を絞ってメダルを狙うということが可能となっています。
しかし加藤澤男氏の時代は、このように1種目だけの参加は認められず、すべての種目を1人で演技できる総合力が求められていたのです。
スペシャリストがいないということ
レギュレーション変更の是非はともかく、加藤氏の時代にはいわゆる“種目ごとのスペシャリスト”が参加していなかったということになります。
つまり個人総合でメダルが獲れれば、その総合力の高さで種目別でも複数のメダルを獲得できるケースが多かったと言えます。
しかし分業化が進んだ現代では、個人総合と種目別は別競技と言ってもいいくらい、両方でメダルをとるのは至難の業となっています。
レギュレーションがどうあれ2人の功績は偉大
これらの違いを比較して、内村航平氏と加藤澤男氏のどちらが最強かを語るのは不毛です。
共に現役時は化け物級の選手であり、日本体操競技の歴史に燦然と輝く2人であることは疑う余地がありません。
しかし国民栄誉賞を内村航平氏だけが授賞すれば、なぜ加藤澤男氏はダメなのか?という声が必ず上がります。
さらに加藤氏はまだ存命。
内村氏だけの授賞となればやはり悔しい思いをするのではないでしょうか。
どちらかだけを優遇するには、2人の功績は偉大すぎるのです。
なぜ内村氏にこれまで国民栄誉賞の話がなかったか?
内村氏の実績は誰がどう考えても国民栄誉賞クラスです。
しかし、それならば何故、現役の間に国民栄誉賞の話が出なかったのか?単純に疑問に思いませんか。
最近では政治利用されることの多い(というかそれ以外にない)国民栄誉賞は、スポーツ選手であれば現役だろうがなんだろうが関係なくバンバン話が振られている印象です。
野球の大谷選手なんてまだこれから本領発揮する年齢でしょうに…。
ただこれも、内村氏にこれまで打診がなかったのは加藤澤男氏の存在があったからだと考えると合点がいきます。
内村航平に国民栄誉賞が授与されない理由!それは内村氏を凌ぐ加藤澤男氏の存在
内村航平氏に国民栄誉賞は授与されないという声の理由について解説してきました。
そこには内村氏を凌ぐ実績を持つ加藤澤男氏の存在があり、加藤氏が国民栄誉賞を授与されていないという背景があることがお分かりいただけたと思います。
そもそも国民栄誉賞の価値自体がダダ下がりの昨今、あまりその授与について議論する意味もないのかもしれません。
今は何よりも内村航平氏に対して心から「お疲れ様でした」と伝えたいと思います。
そしていつか、加藤、内村すら凌駕する選手が現れることを祈って…。