作曲家のすぎやまこういち氏(本名・椙山浩一)が9月30日、敗血症性ショックのため死去していたことがスクウェア・エニックスのホームページで発表されました。90歳でした。
すぎやま氏と言えばゲームソフト「ドラゴンクエスト」の音楽や、JRAのファンファーレ、その他数多くの名曲を世に送り出した名作曲家。
ネット上でも悲しみの声が広がっています。
しかしながら生前のすぎやま氏は、様々な差別発言でたびたび世間を騒がしていました。
この記事では、作曲家・すぎやまこういち氏の別の一面について掘り下げていこうと思います。
そこには意外なドラクエとの関連性も垣間見ることができました。
もくじ
その半生が24時間テレビでドラマに!
2022年8月27・28日に日本テレビで放送される24時間テレビで、すぎやま氏の半生を描いたドラマがオンエアされるそうです。
24時間テレビと言えば「感動」が売り物ですから、おそらくすぎやま氏の差別発言などは無かったことにされてしまうのでしょうね…。正直内容はあまり期待はできません。
すぎやま氏の代表作
いまさら言うまでもありませんがすぎやま氏が手がけた作品はあまりにも多く、その影響力は多大なものがあります。
- ドラゴンクエストシリーズ(ほぼすべての楽曲)
- ゴジラvsビオランテ BGM
- 帰ってきたウルトラマン主題歌
- 恋のフーガ(ザ・ピーナッツ)
- 亜麻色の髪の乙女(ヴィレッジ・シンガーズ)
- JRAファンファーレ(東京競馬場、中山競馬場)
その他、著名ミュージシャンへの提供曲や2,000を超えるというCMソングなど多数。
今年亡くなった小林亜星さんもそうですが、この時代の作曲家の方々の創作意欲というのは一体どうなっていたのでしょうか…。
「ドラクエ」仲間も追悼
共に「ドラゴンクエスト」という稀代の名作を作り上げた堀井雄二氏、鳥山明氏も追悼コメントを発表しています。
堀井雄二氏のコメント全文
すぎやま先生がお亡くなりになりました。先生は35年間、ドラクエの世界に音楽という命を吹き込んできてくださいました。ドラクエは先生の音楽とともにありました。ゲームとともに、ユーザーの皆さんの心の中に、先生は生き続けるでしょう。すぎやま先生、長い間、本当にありがとうございました
鳥山明氏のコメント全文
すぎやま先生の訃報を聞き、驚いています。つい数年前にお会いした時の印象からもいい意味で、永遠の命を持つ魔法使いのように思っていました。ドラゴンクエストのイメージは、当時からゲームが大好きでいらした、すぎやま先生の素晴らしく印象的な数々の名曲によって決定付けられた。と言っても過言ではありません。長くご一緒に仕事をさせていただいて本当に光栄でした!心よりご冥福をお祈りいたします。
すぎやまこういち氏の差別発言
多くの人々がその死を悲しむほどの名作曲家でありながら、すぎやま氏は差別論者としての一面も合わせ持っていました。
その内容をご紹介します。
反LGBT発言に同調
すぎやま氏は2015年7月に放送されたチャンネル桜の「日いずる国より」内の杉田水脈との対談で、杉田氏の反LGBT発言に同調。
↓こちらがそのときの模様です。
動画ではほとんど杉田氏が喋っていますが、同席している男性がすぎやま氏本人であり、杉田氏の意見に相槌を打って同調しているのが確認できます。
この番組での対談の一部を文字起こししてみた
この番組でのすぎやま氏、杉田氏の会話をかいつまんで文字起こししてみます。
杉田「生産性がない同性愛の人達に皆さんの税金を使って支援をする。どこにそういう大義名分があるんですか、っていうことがまず一点なんですしね。これは差別じゃないんです。区別なんですね」
すぎやま「区別、うん」
杉田「多感な思春期の時期に『LGBTの皆さん、どうどうと胸を張って、そんなに縮こまらなくていいですよ。同性愛の人も胸を張っていきましょう』という教育をしたら、どうなりますか。ちゃんと正常に戻っていける部分を、戻っていけなくなってしまいますよね」
すぎやま「決定的なことは、同性愛から子どもは生まれません。これも大きいよね」
すぎやま「性同一性障害は神経科が扱う問題なのか、ホルモン異常なのか、生理的なものなのか2種類あると思う。ぐしゃぐしゃに混ぜてしまうのは間違いだし、その狙いはなんなんだろう。奥に変な狙いがあるかもしれない」
すぎやま「こういった問題に対して、杉田水脈さんががんがん発言してブログが何度も炎上するように書いてください」
(もう1人の参加者が「杉田さんが言ってることって非常にまともですよね」と促したところ)
すぎやま「正論ですよ」
LGBT関連は非常にデリケートな問題ですが、すぎやま氏は一貫してそれを認めない考えを貫いています。
オリンピック開会式でも問題に
実際、これらの発言が問題視されオリンピック開会式ですぎやま氏の楽曲が使用されることに対して批判の声が上がりました。
最終的にはそのまま使用され、結果的には非常に盛り上がったので良かったのですが…。
すぎやま氏の思想は世界的に見たら「時代遅れ」だと言われてしまうかもしれません。
ドラクエと差別思想との関連性は?
ではそのようなすぎやま氏の思想がドラゴンクエストと何か関連している部分はあるのでしょうか?
ドラクエⅣ「ジプシーダンス」
「ジプシーダンス」は、ドラゴンクエストⅣの第4章・モンバーバラの姉妹編の戦闘シーンの楽曲です。
一度聞いたら忘れられない、ドラクエ曲の中でも至高の一曲と言われます。
この「ジプシー」とはヨーロッパを中心に各地に散在する移動型民族を差す言葉なのですが…
実は「ジプシー」が差別用語
近年の日本においては、「ジプシー」は差別用語、放送禁止用語と見做されます。
移動型民族というのは様々な地域を転々とするため、中にはそれを歓迎しない地域も数多く存在しました。
彼らの音楽や舞踊は祭礼などでは歓迎される面もありましたが、地域住民から差別と迫害を受けてきたという歴史があります。
さらにナチスが1933年から彼らの絶滅政策をとり、約50万人が虐殺されたといいます。
こうした背景から「ジプシー」という言葉は差別的な意味を持つようになったのです。
すぎやま氏がこれを意図していたかは…?
もちろんすぎやま氏がこの差別的意味合いを意図してこの楽曲を制作したかどうかは分かりません。
それでもすぎやま氏の発言などから、どうしても邪推してしまう方がいるのも致し方ないでしょう。
ただし、それと楽曲の素晴らしさとはまた別問題。
こんなに素晴らしい心躍る曲を作曲できるすぎやま氏の技術とセンスには脱帽するより他ありません。
すぎやまこういち氏は差別論者…それでも楽曲の価値は揺るがない!
すぎやまこういち氏の差別発言について掘り下げてきました。
過去の発言内容から、すぎやま氏が特にLGBT関連に対してそのような思想を持っていたことはほぼ間違いないでしょう。
しかしながら、先ほども申した通りそれと楽曲の素晴らしさは切り離して考えなければいけません。
今はただ、歴史的名作曲家の訃報が残念です。心よりご冥福をお祈り致します。