2020年末、1979年に発売された日本の名曲が世界の音楽シーンを席巻しました
その曲こそ、松原みきさんが歌う「真夜中のドア/Stay With Me」です。
Spotifyのグローバルバイラルチャートで18日間にわたりトップを記録するという快挙。
バイラルチャートとは「Spotify上から様々なSNSでシェア・再生された回数などのデータを元に、『いまSNSで最も話題になっている曲』をSpotifyが独自に指標化したもの」とのこと。
そのグローバル(世界)版で2週間以上に渡ってトップなのですから、まさに世界を席巻したと言っていいのです。
もくじ
松原みきさんとは
それでは、歌い手である松原みきさんのプロフィールに迫ってみたいと思います。
1959年11月28日生まれ
大阪府堺市平岡町出身
O型
活動期間:1979年 – 2001年
2004年10月7日、子宮頸がんにより死去「44歳)
この世を去っている
残念ながら松原みきさんは病気のため2004年に44歳の若さでこの世を去っています。
42年前にリリースした自分の曲が今こうして世界中から注目を浴びているのを、きっと天国で喜んでいることでしょう。
母の影響で音楽と出会う
母親がクレージーキャッツと共演したジャズ歌手であったことから、3歳でピアノを習いジャズに親しんだそうです。
中学時代にロックに興味を抱きバンドを結成。高校時代に組んでいたバンドではキーボード担当だったとか。
1977年、高校3年生の時に歌手デビューのため単身で上京。
米軍キャンプなど各地で演奏し、その実力で大きな注目を集めるようになります。
そして1979年、1stシングル「真夜中のドア〜Stay With Me」でデビューを果たします。
「真夜中のドア/Stay With Me」
では、大注目の「真夜中のドア/Stay With Me」とはどんな曲なのでしょうか。
この曲は、いわゆる「シティポップ」というジャンルにカテゴライズされています。
シティポップって何?
実はシティポップには明確な定義がありません。
音楽ジャーナリストの柴那典氏によると
「概念的だが、1970、80年代の日本で、都会的でおしゃれなイメージの曲として聴かれていたポップソング」
ということです。
「真夜中のドア」を聞くと分かりますが、とても42年前の曲とは思えない、おしゃれで洗練された曲だというイメージを持つのではないかと思います。
シティポップを代表するミュージシャンは山下達郎さんや竹内まりやさん、大瀧詠一さん、大貫妙子さんなどです。
現代音楽の礎を築いたと言っていい面々ですね。
なぜ海外で爆発?
シティポップへの注目度は、2010年代後半には既に高まっていたと言います。
ではなぜ海外でシティポップが注目されるようになったのでしょうか。
海外のコアな音楽ファンが火付け役
2010年代の前半、1980年代頃の日本を含む各国の曲や音源の一部を取り入れ(サンプリングして)、新たな曲を作り上げる「Vaporwave」というジャンルが話題になりました。
その中から日本の曲だけに的を絞った「Future Funk」という新たなジャンルが生まれます。
やがてVaporwaveやFuture Funkは世界的なトレンドになります。
サンプリングする曲の“ネタ探し”として日本の70年、80年代サウンドにはどんどん注目が集まり、シティポップの曲は世界中で発掘されていきました。
数ある楽曲の中で
そんな中、数あるシティポップの名曲から最も”ウケた”のが松原みきさんの「真夜中のドア」だったのです。
海外ではバラードより、聴いていると自然に体が動くようなグルーヴ感のある曲が支持されるといいます。
「真夜中のドア」はスローテンポな曲調ながらも刻まれる音数が非常に多く、一つ一つの音が本当に作り込まれています。
また、現代の打ち込み音楽と違ってすべて生音演奏である点も見逃せません。
機械的な音でなく、人間が奏でる音の生々しさ、情熱や色気を孕んだその魅力的なサウンドが、耳の肥えた海外音楽ファンをも唸らせたのです。
現代ミュージシャンもカバー
今、大注目の若手天才ミュージシャン・藤井風さんも「真夜中のドア」をカバーしています。
男性が歌うバージョンもいいですね。
曲そのものがしっかりしているので、誰が歌っても曲の雰囲気が壊れることなく歌い手の持ち味も出せる。
こういう曲は簡単に生み出せるものではありません。
時代を超えて
松原みきさんの声でこの曲を聴くことはもうできませんが、こうして若いミュージシャンや世界の音楽ファンによって「真夜中のドア」という曲は歌い継がれていきます。
良いものは時代を超えて愛される…まさにそれを証明している名曲と言えるでしょう。
まとめ
松原みきさんの経歴や生い立ちを振り返りながら、名曲「真夜中のドア」にも迫ってきました。
まさかこんな形で半世紀近く前の曲が世界から注目を集めるとは・・・。何が起きるか分かりません。
「日本の音楽は終わった」などと言われて久しいですが、CDの売上枚数や動画の再生回数だけでしか名曲判定できない仕組みそのものが、日本の音楽衰退の要因ではないでしょうか。
新しいものを無理に生み出さずとも、既に発表されている曲の中に素晴らしい原石が眠っているという事を、松原みきさんは教えてくれた気がします。