見たい、聞きたい、話したい…
ここにはそれがある。
あした使えるはなしのたね
2021年発行

【ウマ娘】プロフィールは史実に沿っているのか?比較その2 ~サイレンススズカ~ 2021.5.10

プロフィール比較・第2回

ウマ娘のキャラクタープロフィールと実際の競走馬を比較してみようのコーナー。

第2回の今回は、公式サイトで前回やったスペシャルウィークの隣だったから、という安易な理由でサイレンススズカです。第1回 スペシャルウィーク編はこちらから↓

【ウマ娘】プロフィールは史実に沿っているのか?検証その1 ~スペシャルウィーク~ 2021.5.9

どのキャラが人気とか、そういうが全然分からないのですみません。順番はテキトーです。

それでは早速、ウマ娘サイレンススズカのプロフィールを見てみましょう。

スタート直後から先頭に立ち、そのまま独走する『大逃げ』を得意とする天才肌。
物静かでストイックだが、他者を嫌っているわけではなく、ただ走ることに心を奪われているだけである。スペシャルウィークと同室の先輩で、その透明感に憧れる者は多い。

なるほど。

それでは一つ一つ精査していきましょう。

稀代の逃げ馬

「スタート直後から先頭に立ち、そのまま独走する『大逃げ』を得意とする」というのはまさに競走馬サイレンススズカの真骨頂です。

競走馬にはレースで得意とする戦法(脚質といいます)があり、レース開始直後から先頭に立ってそのままゴールまで駆け抜けようとする馬もいれば、前半は後方に待機して後半のラストスパートに勝負をかける馬もいます。

どの戦法が有利ということはなく、大抵はその馬の性格に左右される部分が大きいです。

例えば逃げ馬の場合、他の馬を異様に怖がるため先頭に立って逃げないとレースにならない、などその馬の個性が脚質に大きく影響を及ぼします。

何となく分かるかもしれませんが、成績を安定させようと思えば極端な戦法は取らない方がいいです。

逃げや追込(おいこみ)といった一番前か一番ケツみたいな戦法は、バテてしまうのが早かったり全然前に届かなかったりして成績が安定しないのは何となく想像がつくでしょう。

できることならみんな先行か差し、というちょっと前目かちょっと後ろ目というポジションからレースをしたいわけです。

ですが先述の通り競走馬の性格には様々な特徴があって、極端な戦法でもそれを選ばざるを得ないケースが多々あるのです。

その中で「逃げて強い馬は本当に強い馬」と言われます。

当然と言えば当然です。スタート直後から先頭に立つスピードと、それを最後まで維持するスタミナ、両方を兼ね備えていないと勝つことはできないからです。

前置きが長くなりましたが、このサイレンススズカはそんな逃げ馬の中でも最強クラス。

いや、未だに彼を史上最強馬だと言うファンもたくさんいるぐらい、強烈な逃げ馬だったのです。

影をも踏ませぬ逃走劇

サイレンススズカの逃げに多くのスペースを割くことになりますがお許しください。

でもそれぐらい、サイレンススズカの逃げは圧倒的です。

「影をも踏ませぬ」という表現は彼のためにあると言ってもいい。

競馬もレースなので、ペースとかラップとかがちゃんとあるわけです。

これがめちゃくちゃだといくら強い馬でも勝てません。

ところがサイレンススズカはそんなものお構いなし。

ポーンとゲートを出て自分のペースでひたすら走ったら、あれ?他の馬が全然ついてこれてない…という状況になるのです。

普通おかしいんですよね。ペース配分を考えなければスタミナが持たずバテるのが当たり前なのに、彼の場合はそれがない。

まさに異次元の走り。

影をも踏ませぬ、と言いましたが、異次元空間を走っている馬の影は絶対に踏めません。

そんなとんでもない逃げですから、そりゃウマ娘サイレンススズカのプロフィールにも初っ端に書き連ねられるってもんです。

天才肌

そんな競走馬サイレンススズカも、デビュー当初からいきなり最強街道を爆進したわけではありません。

たしかにスケールを感じさせる馬でしたが、最初はそこそこ強い先行馬、という程度のイメージでした。

代名詞とも言うべき「逃げ」はまだ開花していなかったのです。

2、3番手につけたり、たまに先頭に立ってみたり、一貫性のないレースぶりで惨敗することも何度もありました。

しかしその才能を開花させたのは誰であろう、「天才」武豊です。

武豊はサイレンススズカのスピード能力に目をつけ、これをレースで思いっ切り開放したらいいのではないかとそのリミッターを解除したのです。

そこから快進撃が始まるのですが、どちらかというと成績が安定しない苦労の時期を乗り越えたからこそ開花した馬、というイメージです。

いきなり天賦の才で他馬を置き去りにした馬、というわけではありません。

むしろ自分ではない「天才(武豊)」によって見出されたシンデレラボーイ、という印象ですね。ん?ウマ「娘」だからボーイじゃダメなのか?ややこしい・・・。オス馬を女体化するからこうなるんだよ・・・。

物静かでストイック

正直、レースぶりが派手過ぎて物静かなイメージは全くありません。

ただ「ストイック」に関しては武豊騎手も語っている通り、真面目に一生懸命走るのでどうしても気持ちが前に前に行ってしまっていたようです。

それが逃げという戦法に向いていたという面もあるでしょう。

「走ることに心を奪われているだけ」というウマ娘のプロフィールにも通じるものがあります。

あとサイレンススズカで有名なのは何と言っても“旋回癖”ですね。

馬房(という馬のお部屋)の中を左回りでグルグル旋回する癖がありました。

そしてサイレンススズカの場合、その旋回スピードが異常に早かった!

こんなとこにも才能の片鱗を見せていたのかもしれません。

そして伝説へ…

プロフィールの「スペシャルウィークと同室の先輩」うんぬんはごめんなさい、アニメの中の設定っぽいので触れられません。

ウマ娘内で2頭がどういう絡みをするのか分かりませんが、サイレンススズカとスペシャルウィークはただの一度も同じレースで走ったことがないということだけは記しておきましょう。

そしてサイレンススズカは悲しい運命を迎えます。

1998年 天皇賞・秋ーーー

いつも通りスタートから先頭を奪い、文字通り影をも踏ませぬ走りで快調に飛ばすサイレンススズカ。

今日も一人旅で独走のゴールかと誰もが思ったその瞬間、コースのくぼみに脚を取られ骨折、競走中止。

下された診断は「予後不良」。これは”安楽死処分”を意味します。

異次元を駆け抜けたサイレンススズカは、本当に誰の手も届かないところへ走り去ってしまいました。

その喪失感たるや…当時の競馬ファンは全員が、星になったサイレンススズカに思いを馳せたのです。

圧倒的な速さと強さで我々に夢を見せ、あっという間にこの世界から消えてしまったサイレンススズカの儚さを「透明感」という言葉で表現しているのであれば、それはなかなか粋じゃん、と思いますね。(N)