ダメな文章の典型例
これはけっこう簡単です。最もタチの悪い文章は「長い」文章。
正解に言うと「長く感じる文章」です。例えば本当に面白い小説ならば、どんな長編であろうとあっという間に読破してしまうはずです。
逆に言うとどんなに内容が濃くて事実や知識に裏打ちされた文章でも、読んでて長ったらしいなぁと思ったら大した文章ではありません。
K小室氏が自身の潔白のためにA4用紙実に28枚に渡る文書を公開しましたが、ああいうのはハッキリ言ってヘボい。
日本人の文章に対する考え方として「長ければ良い」という意識が非常に強い。
これも作文や論文で「原稿用紙◯◯枚」とか言って評価するからおかしくなる。
我々物書きからすると、文章を引き伸ばしてダラダラと書くことなんて誰でもできるという認識です。
というのも大抵の場合、書けるスペースや文字数というのは決まっているからです。「好きなだけ書いてOK!」なんてどこのお偉い文筆家なんでしょう。
許された範囲内でいかに自分の言いたいことや伝えたいことをまとめるか。
長く書くことより短く簡潔にまとめることの方が実ははるかに難しいのです。
最終的にはここに文章力の高さが集約されると言っても過言ではありません。
誰にでも当てはまる内容
占い師にこんな風に言われたことはないですか?
「あなたは今、大きな悩みを抱えている。それは周囲の人間との付き合い方だ。ですが安心してください。いつか必ず道は開けます。あなたの行動次第なのです。」
こんなに分かりやすい薄っぺらなことを言う占い師は居ないにしても、大概は似たようなもんです。
- 大きな悩みを抱えている → 悩みのない人間なんて居ません
- 周囲の人間との付き合い方 → 悩みのほとんどは人間関係に終着します
- 必ず道は開けます → 人生、なるようになるんです
- あなたの行動次第 → 何でもほとんどそうです
こういう誰にでも当てはまる内容の文章も大概ダメですね。
歌詞とかでもそうです。
いっとき流行った青春応援ソングみたいなノリの曲の歌詞はどれもこれもこんな感じでした。
たった一つ、信じるもの握りしめて、あの空へ高く突き上げろ
そしてその側で君に笑っていてほしいんだ
君の一言で、そう君の勇気で願いが叶う気がする
流した汗と涙は裏切らないから…
みたいな内容の歌、いっぱいありましたよね。どこの誰の歌とは言いませんが。
たしかに誰に対しても応援の意味は伝わるのかもしれませんが、大の大人がいつまでも空に拳を突き上げてはいられないわけです。もっと抉っていかないと。
あれはちゃんと曲とメロディがあるから成立するのであって、文章として読んだら恥ずかしくて顔から火炎放射ですよ。
雑誌の人生相談や恋愛相談コーナーにこのような文章が溢れています。
相談者は1人なのに、それ以外の人にも役に立つようなことを書こうとしている。
文章のターゲットを「不特定多数」にしないことです。
誰にでも刺さる可能性のある文章は、裏を返せば誰の心にも刺さらない文章になってしまう可能性があるからです。
「時間」を意識していない
読み手のことを考えて文章を書くべき、と言われますが、それを読んでる相手のそのときの状況なんて知ったこっちゃないわけです。
メシ食ってるときかもしれないしトイレで踏ん張ってるときかもしれない。
恋人と別れて傷心しているときかもしれない、一人孤独にスマホをいじっているときかもしれない。
そんなことをいちいち考えていたら文章なんて書けません。
ただ、書き手が読み手から必ず奪ってしまうものが確実に一つあります。
それが「時間」です。
冒頭の「長い」文章はまずこれが問題ですね。長いというだけで読み手から奪う時間も必然的に長くなります。
その長さに責任を持てるだけの覚悟がない限り、長い文章を書くべきではありません。
それからこれも絶対条件ですが、読むより書く方が時間がかかります。それだけ苦労をする。
でも苦労したからと言ってそれが読み手に与える影響は皆無です。
そもそも文章を書かない人は、書いている人のことを考えて文章を読むなんてことはしません。
だからどんなに熱を込めて時間をかけて書いた文章も、テキトーに鼻くそほじりながら書いた文章も、読み手から奪う時間は同じです。
文章の価値はこちらの努力には全くもって比例しません。読んだ人がどう思うか。悲しいけれどそれだけです。
だからこそ、自分の文章で読み手が奪われてしまう「時間」のことを意識するのが、最初にして最高の思いやりではないかと思うのです。
読みやすい文章を書くためには句読点の付け方とか改行のタイミングとか何とか論法とか、そういうことを考える前に「自分は読み手の貴重な時間を頂戴するのだ、ありがとうございます」と一礼してから筆を執るようにしましょう。
まとめ
それでは今回の内容のまとめです。
- ダメな文章 その一 「長い」
- ダメな文章 そのニ 「誰にでも当てはまる」
- ダメな文章 その三 「読み手の時間を意識していない」
嘘や事実でないことを書くのはもはやそれ以前の問題です。
それなのにそういう文章でメシを食っている写真週刊誌は本当に許せない思いがします。
ただ、そうした嘘かホントか分からないゴシップネタが結局は一番ウケるという…。悲しい話です。(N)