一大ムーブメントとなっている、イタリア発祥のスイーツパン「マリトッツォ」。
マリトッツォとは、ブリオッシュ生地と呼ばれるフランスの菓子パン生地に、溢れんばかりのたっぷりの生クリームをサンドしたもの。
シンプルな構成ながら、生地とクリームの相性の良さ、そして何より大量の生クリームの甘~い味わいが、疲れ切った現代人に癒しを提供しています。
この記事ではそんなマリトッツォの
- 意味や由来
- 意外と”お堅い”その起源
といったところに迫ってみようと思います。
もくじ
ロマンチックな意味と由来
イタリア、ローマ発祥とされるマリトッツォ。その味にふさわしい、甘くロマンチックな由来があるようです。
プロポーズに使われる?
マリトッツォのイタリア語表記は「Maritozzo」。
イタリア語でMarito(マリート)は「夫」を意味する言葉です。女性が、将来自分のマリート(夫)になる男性から受け取るお菓子として広まったと言われています。
また、夫がまだ眠っている妻のために朝食として買いに走るパンであったからという説もあります。
いずれにしても男女や夫婦の仲を結ぶための存在という、甘いスイーツならではのロマンティックな由来があります。
こうした背景から、イタリアでは現代でもマリトッツォのクリーム部分に指輪を乗せ、プロポーズをする男性もいるようです。
実にイタリアらしい話ですね。
「ozzo」の部分は?
ちなみにmaritoの後の「ozzo」の部分は親しみを込めて付けられる接尾辞で、特定の意味を持つ言葉ではありませんが、日本語でいう「ちゃん」に似たようなニュアンスを持ちます。
よって「maritozzo」を強引に日本語訳するならば、「夫ちゃん」や「旦那ちゃん」といった感じになるでしょうか。
これはこれで愛くるしさがあって楽しい気分になりますね。
詩人が詩にするほどの魅力
イタリアの詩人・イニャツィオ・シフォーネは、このマリトッツォをテーマにこんな詩を生んでいます。
僕の目の前に、艶やかで真っ白で、生クリームがたっぷり詰まったあなたがいる。僕はよだれを垂らし、あなたを愛でている。あなたは僕の健康を害すると、医者がうるさく言うけれど、それでも僕は宣言する。親愛なるマリトッツォ!僕は君にかぶりついてから、その代償を払うのさ。
これが誰か愛する女性をイメージしてそこにマリトッツォを重ねた詩なのか、シフォーネが単純にスイーツとしてのマリトッツォを異常に好んでいたのかは分かりません。
できれば前者であってほしいです。ただのお菓子にここまで執着している男というのもちょっと怖いので・・・。
ただ、それぐらい魅力的なスイーツであることは伝わってきます。
逆に女性からのアプローチにも
イタリアの田舎の村では、伴侶を探す年頃になった娘たちが村一番の美少年に手作りのマリトッツォを送り、その彼が一番気に入ったマリトッツォを作った少女が彼のお嫁さんになれる、という風習もあったようです。
今でいうバレンタインチョコのような役割も果たしていたんですね。
意外とお堅い?マリトッツォの起源
ローマが発祥と解説したマリトッツォですが、その起源は古代まで遡ります。
遠征時の携帯用
古代ローマ時代に誕生したマリトッツォは、当然のごとく現代のような生クリームを挟んだオシャレで可愛いスイーツではありませんでした。
はちみつで甘くしたパンにレーズンなどドライフルーツを加えたもので、サイズももっと大きなものだったそうです。
食べる場面にはロマンティックさの欠片もなく、軍隊が遠征する際などの携帯食として用いられていたと考えられています。
その後、一般家庭でも食されるようになったマリトッツォ。それでもまだスイーツのような位置づけではなく、畑仕事に従事する夫のために妻たちがこしらえる、小麦粉・オリーブオイル・ラード・塩・蜂蜜・干しぶどうで甘く味付けされた丸いパンでした。
断食期に唯一許された贅沢?
また、キリスト教にはクアレージマ(四旬節/しじゅんせつ)と呼ばれるイースター前の40日間は肉を控え、粗食にする期間があり、このクアレージマ中にマリトッツォはよく食されていたとされます。
当時、この40日間に食べられる嗜好品の類はマリトッツォだけだったと言われており、人々は大喜びでマリトッツォをほおばったようです。
これがイタリア全土にマトリッツォが広まっていった理由として挙げられていますが、この期間に食べられていたのはマリトッツォに伝統的に使われていた動物性油脂のラードではなく植物性のオリーブオイルやレーズンで作る、より四旬節用の質素なものでした。
思いのほか起源は“お堅い”もののようです。
まとめ
本場イタリアでは一介の人気スイーツというわけではなく、歴史と伝統を持つ食べ物であるマリトッツォ。
日本ではコンビニでも買える手軽なスイーツパンとして人気を博していますが、その由来にあやかって大切な人への贈り物にしてみてはいかがでしょう?