先日行われた陸上日本選手権、男子3000メートル障害で三浦龍司選手が「衝撃的」な日本新記録を叩き出しました。
なぜ「衝撃的」だったかと言うと、三浦選手は
6周目の水濠を越えたところで転倒!3番手に後退してしまったのです。
そのアクシデントをものともせず日本新を出した事で大きな話題となったわけですが、そんな一流選手でも転倒してしまう”水濠”とは一体どんな障害なのでしょう?
この記事では、
- 水濠障害の構造
- 水濠障害がある理由
- 水濠障害の過酷さ(動画あり)
などに迫っていきたいと思います。
もくじ
水濠障害の構造
水濠障害の構造の前に、まずは3000m障害の内容に触れておきましょう
3000m障害とは
トラックに設置された大きなハードルと、池のような水濠を跳び越えながら、トラック7周の3000mを走る競技です。
国外でも人気のある競技で、海外では「3000SC」と表記されます。
「SC」とは“Steeple(教会) Chase(追う)”の略です。
かつてヨーロッパで教会をゴールとする村から村へのレースがあり、これが障害競走の起源とされています。
そしてその道中にはいろいろな障害物があったことが、ハードルや水濠といった障害へと繋がっています。
水濠障害の構造イラスト
日本陸上競技連盟による、3000m障害の解説イラストがこちら↓です。
水濠はその名の通り、障害(ハードル)を飛び越えたところに濠(ほり)があり、そこに水がはってあります。
横幅は3m66cm、水深は50〜70cmと、かなり大掛かりな障害であることが分かります。
この種目でしか使わない
この水濠は3000m障害でしか使いません。
非常に特殊な機構であり、それが故に競技者にとってはとても過酷な障害となるのです。
ちなみに3000m障害に設置してあるハードルも、短距離で使用するものとは違い“倒れないハードル”です。倒れないのでなぎ倒して進むことはできず、絶対に飛び越えなければいけないのです。
ストップ&ゴーを繰り返す上に、跳躍の足上げと着地の衝撃で腰にも負担がかかりガクガクの下半身…
その状態でハードルを飛び越えた先に待つ水濠…どんな一流選手にも転倒のリスクがあるのは納得です。
なぜ水濠障害がある?
水濠障害がある理由は何なのでしょうか。
野山の道を模している
先述の通り、障害競走の起源はヨーロッパで行われていた、教会をゴールとする村から村へのレースです。
村から村、つまり野山の道なき道を進んでいくレースであったと予想されます。
道中にはデコボコや段差、はたまた川を渡ったり池を飛び越えたり、さまざまな障害があったことでしょう。
水濠は、この川や池を模して作られたものであると言えます。陸上競技としての障害競走は、このような野山にあった障害物を意識して作られたのです。
クロスカントリーのようなイメージ
実際の原野・丘陵・森林などを横切って走る競技であるクロスカントリー。
これの「トラック競技版」が3000m障害という風に考えるといいのではないかと思います。
海外ではクロスカントリーは非常に人気競技であり、それと同時に3000m障害も特にヨーロッパでは競技人口も多く人気種目なのです。
水濠障害の過酷さ
それでは実際の水濠障害の過酷さをご紹介していきます
実際の映像
何はさておき、動画を見ていただくのが一番分かりやすいかと思います。↓
3000mを走っているとは思えないスピードでハードルに突入しているのが分かると思います。そして着地点にはたっぷりの水…
つまづく選手、バランスを崩す選手、激しく転倒する選手の姿が見て取れます。
転倒した選手のみならず、着地でバランスを崩した選手ですらもう全身ビチャビチャです。
そして選手本人にはここに肉体的疲労も蓄積されています。
水濠は我々の想像以上に過酷な障害であることがお分かりいただけるでしょう。
だからこそ光る、三浦選手の偉業
日本新記録を出した三浦選手はこの水濠で転倒しながらも、まるでその転倒が合図であったかのようにそこからスパートをかけ優勝。
三浦選手が転倒したのはレースも終盤となる6周目。疲労も相当溜まってきていたはずです。
しかしここで気持ちを切らすどころか、むしろそれを起爆剤にしてしまうその精神力には驚かされます。是非、本番でもその力を発揮してほしいところです。
まとめ
3000m障害の“水濠”について解説してきました。
この種目でしか使われない特殊な機構で、相当に過酷な障害であることがご理解いただけたと思います。
しかし、だからこそ3000m障害の勝負ポイントは「水濠にある」と言えます。
水濠の奥深さを知った今なら、さらに3000m障害のレースを楽しめそうですね。