見たい、聞きたい、話したい…
ここにはそれがある。
あした使えるはなしのたね
2020年発行

「全集中の執筆」のはなし。2020/11/12/ Thu

「鬼滅の刃」、とんでもないことになりました。

原作を読んだことがないのでただただ、ほぇ~と思って毎日流れる情報を眺めていますが、中でもとんでもないことになっている映画についてとっても良かったなと思うことがあります。

それはあのアニメ映画に、ワケの分からないゲスト声優が一人も出演していないことです。

ここ数年、ディズニーやジブリといった超一流の作品ですら俳優やアイドルといった「素人」が必ずといっていいほど出演していますが、そうした作品を見ると、明らかにプロの声優さんが喋っているシーンと比較した場合の違和感がすごい。

もちろん芸能人を起用する理由は分かります。広告塔が必要だからです。テレビなどのメディアでその作品を宣伝しないといけないからです。

ただ、一つの作品として見た場合、明らかに浮いている存在を、製作者や原作者はどう思っているのか知りたいところではあります。

しかし何があんなに違和感につながるのでしょう。ゲスト声優だって、仕事として一生懸命やっているはずです。しかも俳優さんとか女優さんなら、いわゆる「お芝居」に関してはプロのはず。

それなのにアテレコという形になった途端、急に棒読み感が出て何とも残念な仕上りになってしまう。 これは「使える武器」の違いです。

「声優」という職業の方が使える武器は「声」だけです。対して俳優はこれに「表情」という強力な武器を使うことができます。「目は口ほどにものをいう」という言葉がある通り、人間の表情から読み取れる情報量というのはものすごいものがあります。

例えばアニメの中のキャラクターがいかに怒った表情をしていても、そこにあるのは「絵」です。どんなにあがいても、絵が実際の人間の表情を上回る何かを伝えることはありません。

そして声優はその「何か」を声で伝えるプロです。その武器を持たない俳優が、アニメという世界で華麗に立ち回ることは難しいでしょう。そもそもファンは嬉しいんでしょうかね。

自分の好きなタレントが声優としてアニメ作品に出演することが。大抵の場合、ファンというのはそのタレントの見た目、ビジュアルが好きなわけでしょう。声がめっちゃ好き、という方も中にはいらっしゃるとは思いますが、声だけが聞ければそれでいいという方はいないと思います。

作品の中でその姿形が見えないばかりか、違和感だらけのセリフ回しで映画の世界観すらブチ壊しにする・・・そんな場面を見たいとは思わないでしょう。

まさに「誰トク?」です。人に何かを伝えたり表現をする場合、どんな武器を使えるかを考えるのは重要です。

その武器の種類によって戦い方が変わるからです。文字だけなのか、声だけなのか、相手にこちらの表情は見えるのか?はたまた写真や画像などは使えるのか?音楽は?動画は?非接触のコミュニケーションが増えていくであろう今後は、そうした点がさらに重要になっていくはずです。

戦い方を間違えなかった「鬼滅の刃」が大ヒットとなったことはこれからの指標となることでしょう。

―――スペースが余ったので小咄でも。我が家の娘2人が「鬼滅ごっこ」を始めました。妹 「じゃあ私が禰豆子でお姉ちゃん炭治郎ね」 姉 「私、そういうの決めないの」―――

これが「決めずの刃」・・・お後がよろしいようで・・・。(N)