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2021年発行

オリンピックテスト大会とは?何のために開催するのか 2021.5.9

5月9日に国立競技場にて開催された「東京2020オリンピックテスト大会」。

テストどころか本大会の開催すら危ぶまれている中でテストってどういうこと?

そもそもどんな意味があるの?

どんな競技をやるの?

といった疑問にお答えしようと思います。

オリンピックテスト大会とは

オリンピックテスト大会は「五輪本番を想定したリハーサルの競技大会」とされています。

それぞれの競技ごとにオリンピック本番をイメージし、スコアやタイムを計測する機器のテスト、選手および運営スタッフの動線確認、など様々な予行演習を行うのです。

基本的には五輪が開催される前年に開催都市で実施されるのですが、ご存知の通り新型コロナウイルスの世界的蔓延で本大会はどうなってしまうのか分からない状況です。

そして本来なら昨年に開催されるはずだった本大会の前年、ということは2019年にテスト大会も大半は終了しています。

5月9日に行われたテスト大会はその中でも最も開催予定が遅かった「陸上競技」です。

本来の開催予定は2020年5月5〜6日。つまり丸一年延期されたことになります。

本大会がどうなるか分からないのにテスト?

これは逆を言えば”どうなるか分からないからテスト大会も開催せざるを得ない”というジレンマです。

いざ「開催します!」となって何のリハーサルもないまま本番というわけにはさすがにいきません。

特にオリンピックのために新設されたようなスタジアムや競技場は事前のテストが絶対に必要になってきます。

またマラソンなどコースで公道を使用する場合は交通整理の問題など、テストの持つ意味というのは思いの外大きいものなのです。

何より選手にとって実戦に勝るトレーニングはありません。

あくまで「開催」することを前提としているのであれば、テスト大会は必ず実施しなければいけないものと言っていいでしょう。

世間からの冷たい風当たり

去る5月5日、札幌マラソンフェスティバルにおいて東京五輪のコースを使用してハーフマラソンが行われました。

本番のコースを使用してのまさに「テスト大会」だったわけですが、第4波とされるコロナウイルス感染者増の状況を受け、テスト大会の開催そのものに多くの反発の声が上がっています。

開催中の沿道には多くの観客が集まり密になっていたばかりか、中には「五輪ムリ 現実見よ」と書かれたプラカードを掲げる人も現れるなど、危機感が募っているのです。

たしかに「なぜ今」という声が上がるのは当然です。

しかしオリンピック本大会は7月23日開幕と、もうすぐそこまで迫っています。

ここでテスト大会の延期などをしたところで、果たして問題は解決するのでしょうか。

開催側も苦肉の策であることは慮る必要があるのではないかと思います。

選手たちの混乱

本日行われる陸上競技テスト大会を前に、参加する選手たちからも複雑な思いが語られています。

女子長距離の新谷仁美選手は

「スポーツに対してポジティブに思っている人とネガティブに思っている人がいると思うので、両方に寄り添えるような形で競技をしていきたい」

と語り、同じく女子長距離の田中希実選手は

「それぞれの選手は力を出し切る姿を見せることしかできないので、私もいまある力を精いっぱい出し尽くしたい」

と話しています。

また男子短距離・桐生祥秀選手は

「現状は賛成する人も否定的な人もいるなかで、自分のことばでどういう発言をすればいいのか迷っている自分がいる。アスリートとして心のなかで整理できるようにしたい」

と語るなど、選手たちもどうしていいのか分からないという苦しい思いを抱えているのです。

それでもそこはやはり超一流の選手たち。

我々を感動させるパフォーマンスを見せてくれることと思います。

まとめ 結局どうするのか

こうした状況になっているのはいつまで経っても開催をするしないがハッキリしないからです。

もちろん中止も一筋縄で決められるものでないことは大いに理解できます。

しかし現状の対応を見ていると、開催するしないという意思決定から逃げて、臭いものに蓋をしているだけにしか思えません。

本大会まで3ヶ月を切り、もはや「様子見」の期間は確実に終わっています。

宙ぶらりんの状態が続くことこそが、選手にも我々一般庶民にとっても最悪なのだということに気づいてほしいと思います。