米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が、オールスター戦前日の7月12日に行われた本塁打競争(ホームランダービー)に出場し大きな注目を浴びました。
大リーグの本塁打競争に日本人選手が出場するのは史上初の快挙でした。
投打の二刀流としてプレーする大谷選手は現在、35本塁打をマークして両リーグトップ。本番では残念ながら結果を残せませんでしたが、そのプレーで野球ファンを沸かせているのはご存知の通りです。
しかしオールスター出場後の大谷選手は少々不調に陥っているのではないかとの声も聞かれます。
この記事では
- 大谷選手不調の原因は本塁打競争?
- 本塁打競争に出ると不調になるというジンクスは本当?
- 今までは実際どうだったの?
といった疑問の声にお答えしていきたいと思います。
もくじ
メジャー版・本塁打競争をおさらい
日本でもホームラン競走は行われますが、オールスター前の前座、余興的な意味合いで行われます。
ところが大リーグの本塁打競争はそんな甘いものではありません。そのルールなどを改めて振り返ってみましょう。
本塁打競争のルール
大リーグの本塁打競争のルールは以下の通りです。
- 4分間に球数無制限で本塁打数を争う。
- 途中1回45秒間のタイムアウトが可能。
- 決勝では1回30秒のタイムアウトが追加される。
- 飛距離440ft以上のホームランを2本以上打つと30秒間のボーナスタイムが得られる。
- 本塁打数が対戦者と同数になった場合は、1分間のタイブレークが追加される。
- それでも同数の場合は、時間制限はなく決着が着くまで3スイングずつ打っていく。
- なおタイブレーク中のタイムの追加や停止はない。
これだけでお分かりいただけると思いますが、もう本当に”ガチ”の勝負です。
「10球投げて何球ホームラン打てるかな〜?」みたいな甘っちょろいレベルではないのです。
不調の原因が本塁打競争?
これだけ本気の勝負を強いられる舞台だけに、身体へのダメージが残らないか心配になります。
激しく疲労する
事実、2019年に行われた本塁打競争では、準決勝でゲレーロJr.とドジャースのピーダーソンが2度の延長戦の末に40本塁打対39本塁打という壮絶な死闘を展開。
4分間のあと、ボーナスタイム30秒、さらに1分間の延長戦、そして3スイングずつの再延長戦…。
7分から8分近くフルスイングで打ちまくらなければならないという有り様となりました。
そこに費やされる体力と、かかる肉体的な負荷が相当なものであることは容易に想像がつくでしょう。
こうした疲労によるその後の不調や怪我が心配されるのも当然と言えるかもしれません。
大谷は一回戦で敗退も・・・
実際には大谷選手は延長戦の末に1回戦で敗退、早々に姿を消しました。
それでも直後のインタビューでは
「延長延長でなかなかないと思いますけど、疲れました。最後の30秒がすごく長くて、すごく疲れました。シーズン中もこんなに(バットを)振ることはない」
と語るなど、通常では感じることのなり疲労感を覚えていることが分かります。
後半戦、不調になるというジンクス
本塁打競走に出場した選手は、オールスター後のシーズンで不調に陥るというジンクスがあります。調べたところ、単に疲労による影響だけではないことが分かりました。
普段と違うバッティングに
本塁打競争はもちろん観客を入れて行われるため、スタンドを沸かせるために興行的な要素も求められます。
つまりすべてのボールに対し「ホームランを狙うバッティング」が求められることになります。
ボールを遠くへ飛ばそうとして普段と違うバッティングするため、それまでのバッティングフォームを崩してしまいおかしくなると言われています。
実際の数値
本塁打競争が現在のようなトーナメント制になってからの優勝者が、前半戦と後半戦でどれだけ成績が違うかを見てみましょう。
2019アロンソ
前 .280 30本
後 .235 23本
2018ハーパー
前 .214 23本
後 .300 11本
2017ジャッジ
前 .329 30本
後 .228 22本
2016スタントン
前 .233 20本
後 .254 7本 (怪我)
2015フレイジャー
前 .284 25本
後 .220 10本
数値は打率とホームラン数です。
ホームラン数が後半の方が少ないのは試合数そのものが少ないため当然ではあります。
これを見ると確かに打率を落とす選手も多く、不調になると言えなくもないですが、逆に打率を大きく上げた選手もおりそこまで明らかな傾向とは言えないと思います。
ただこれは“優勝者”に限った話なので、全体ではもっと顕著な数字が出ているかもしれません。
出ない方がいいという声も…
こうした実情やデータを見ると、無理して出場しない方がいいという声があるのも頷けます。
マドン監督は
エンゼルスのマドン監督は、大谷選手の本塁打競争出場についてこう話していました。
「わからない。他の人たちに反対するわけではないが、“終わりがない”のがよくないと思う。もっと良いメソッドがあるはずだ。
今のダービーは打者に疲労困憊をもたらすやり方だ。
それでも私は、彼自身がどう感じているかは聞く。彼がやりたいと言ったら、力づくでやめさせることはできないからね」
あくまで大谷選手本人の意思を尊重するとしながらも、本塁打競争への出場そのものには諸手を挙げて喜べない部分があったようです。
二度と現れないかもしれない選手だからこそ
大谷選手はマンガの中のキャラかと思うほど現実離れなことをやってのけます。
そもそも大リーグで二刀流なんて、下手をしたらマンガの中の設定としても「やり過ぎ」と言われるレベルです。
もしかしたらもう二度と、こんな選手は現れないかもしれない…
だからこそ、その活躍をずっと見ていたい…
そうしたファンの思いが、今回の本塁打競争出場後の大谷選手について過敏な反応をさせてしまうのかもしれません。
しかし大谷選手はもはや人類史上最高かもしれない野球選手。過保護になってしまうのも致し方ないと言えるでしょう。
まとめ
大谷選手の本塁打競争出場後の成績に対して湧き上がる、不安の声の理由を掘り下げてきました。
実際に心配になる部分があるのは事実ですが、もしこのチャンスを逃していたら日本人選手がメジャーの本塁打競走に出場することは金輪際なかったかもしれません。
どんなに貴重でスペシャルな選手であったとしても、大谷選手の野球人生は大谷選手のものです。
これからも大谷選手自身が後悔することのない選択をしてほしいですし、その選択を尊重できるファンで居たいと思います。