集英社が19日、秋本治さん(68)の人気作「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の最新刊となる201巻を10月4日に発売すると発表しました。
連載を修了した2016年から5年ぶりの新刊となる201巻には、16年以降に「ジャンプ」などで不定期掲載された読み切りものや、16~18年に開かれた「こち亀展」の展示用に描かれた作品を予定しているとのこと。
これに対しネット上では、最新刊の発表に歓喜の声が上がる一方、新作描き下ろしとされるその絵に対しては、
- あまりにも雑すぎる・・・
- 麗子は落書きか何かか?
- もはや受け入れられない絵になっている・・・
など、絵柄の変化に関して嘆きの声も・・・
この記事では、そんな「こち亀」の絵柄の変化の理由について、秋本治さんご本人の発言も交えながら考察していきたいと思います。
もくじ
ニュースの画像は201巻の表紙ではない
201巻発売決定のニュースの中に使われている画像がこちらです↓
最新刊のニュースの中で使われているのでこれが201巻の表紙だと思ってしまった方もいらっしゃるようですが、これは7月19日発売の週刊少年ジャンプに掲載されている扉絵です。最新刊の表紙ではありません。
それでも直近の絵であることは間違いない
それでもこの絵は「新作描き下ろし」となっているので直近で書かれたものであることは間違いありません。このような絵柄がなかなか受け入れられない往年のファンもいらっしゃることでしょう。
絵柄についての不満はすでに200巻の時点で・・・
絵柄については200巻の表紙絵が公開された時点でもかなり波紋を呼んでいました。
顔変わりすぎだな両津と中川は
これ見ると限界だったんだろうなと感じる
などなど、かなりのっぺりとした印象の絵柄に悪い意味で衝撃を受けるファンの声も・・・。そして纏や檸檬はいるのに主要キャラである部長がいない・・・
絵柄の変化については200巻の表紙に限った話ではなく連載の晩年からすでに明らかで、全盛期のようなダイナミックで躍動感溢れる絵柄ではなくなっていたのは間違いありません。
この鬼気迫る部長の顔も是非200巻の表紙に載せてほしかったです。
実際の201巻の表紙画像
↓こちらが実際に10月4日に発売される、201巻の表紙絵です。
賛否いろいろあることは想像できます。少なくとも、全盛期と言われている頃の絵柄とはかけ離れていると言っていいでしょう。
絵柄が変わってしまうのはなぜ?
ではなぜ、絵柄がこんなにも変わってしまうのでしょうか。
加齢による衰え
これがもっとも単純で大きな要因ではないでしょうか。
秋本治先生は現在68歳。こち亀の連載を終えた時点ですでに60歳を超えており、いくらお化けだ天才だと言われていたとはいえ、体力的な衰えがあるのは当然です。
腱や筋肉の衰えは筆圧の強さに大きく影響します。絵画と違って1本の線で人、物、背景を区別する必要があるのが漫画というジャンルです。。
この“1本の線”の変化で絵柄の印象も大きく変わってしまうのです。
特に曲線にその影響が大きい
漫画批評家で自身も漫画家である夏目房之介氏は
肉体が衰えると線がうまく描けなくなる、特に曲線の丸みが出せなくなる
と語っています。
漫画は人物が中心ですから曲線が多くなるのは当たり前です。肉体的な衰えが現れやすいジャンルと言えるでしょう。
また、漫画は基本「モノクロ」であることも大きいと思われます。絵やイラストはカラーなので、“塗り”という工程でそうした線の弱さを補うことが可能になってくるからです。
ご本人の心境の変化
秋本先生は40年間にも及ぶ連載生活の中で
変わったのは、なんといっても自分の年齢です。
と、あるインタビューで語っています。
↓続き
両さんは30代半ばの設定です。最初は僕にとって“年上のおじさん”だったのに、やがて同年代に。
(中略)そのうちにこんどは僕のほうが年上になり、部長に年齢が近くなりました。そうなると部長の気持ちが痛いほどわかって、両さんに仕事を真面目にさせるようになりました。
このころは部長がメインの話も増えましたよ。部長が浮気まがいのことをしてしまったりとか、部長がポケモンをやりだしたりとか。むしろ部長が暴走して、両さんが止める展開が多かった(笑)。
僕自身が年齢を重ねてきたこともあって、じつは両さんのキャラは二転三転しています。初期のころは子供を平気でブン殴っていたし、タバコも吸っていました。
でも後半は警察官をやりながら寿司屋に住み込みで働かせて、疑似的に家族を持った設定にしたので、だんだんお父さんぽくなってきた。主な読者が子供ですから、放っておくとどんどん優しい人になっちゃうんです。
このように、秋本先生自身も両さんをはじめ登場キャラへの感情移入の仕方が年齢とともに大きく変わっていったことが分かります。
どんな“両さん”や“部長”を描きたいか、また自分がどんな感情をキャラクターに重ねているか、によって絵柄が変わったとしてもまったく不思議ではありません。
女性キャラについては・・・
これも様々なところで言われていますが女性キャラの体型に関しても大きな変化が見て取れます。
もっとも顕著なのは「バストの大きさ」です。
これについて秋本先生は、
当時はイエローキャブ所属の巨乳タレントが流行っていたのでそれに乗った
としています。
素晴らしい(?)発育っぷりです。
本当のところはただの好みの問題かもしれませんが、急に巨乳好きになったって別にいいと思います。年齢とともに好みのタイプの女性が変わることなんて珍しくも何ともないことです。
このように、改めて考えてみれば漫画のキャラクターに作者の感情や趣味趣向が表れ、絵柄が変わっていくのは至極当然のことと言えるでしょう。
そもそも絵柄の変化は劣化ではない
漫画に限らず、絵を描いている方たちから聞かれるのは、そもそも絵柄の変化は劣化ではない、という声。
それどころか「絵柄なんて安定しないもの」という意見すらあります。
描きたいものがたくさんあり過ぎる!
何を描きたいか、によってどんな絵を描くかも変わってきます。
つまり「描きたいものがたくさんあれば、絵柄なんてその都度変わる」ということが言えます。
特に新しもの好きな秋本先生のことですから、まだまだ描きたい事や物は山ほどあるのではないでしょうか。
その度に、また新たな絵柄や作風を見せてくれると思えばそれもまた楽しみの一つになります。
40年間休まずに連載し続けるために・・・
秋本先生の絵柄の変化は、40年間休まずに連載し続けるために編み出した最良の方法とも言えます。
絵を描くことに時間がかかりすぎて締め切りに間に合わない、休載を連発する、なんてことになるのが一番いけないことです。
最も効率よく、こち亀という作品を読者の元に送り届けるためにはどうしたらいいか・・・。
ご自身の体や心情と相談した結果が、あの絵柄であったと考えれば納得がいくのではないかと思います。
まとめ
こち亀最新刊や最近の絵柄から、その変化のなぜ?を掘り下げてきました。
体力的な衰えという理由があるのは間違いないですが、そこには秋本先生の心境の変化や、読者を落胆させないための工夫が影響した部分も多分にあると思われます。
いずれにせよギネスにも載った日本を代表する作品である「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。まだまだ私たちを大いに笑わせてほしいと思います。ただ秋本先生はどうか無理をなされないよう・・・