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2021年発行

【ウマ娘】プロフィールは史実に沿っているのか?比較その3 ~トウカイテイオー~ 2021.5.11

プロフィール比較の第3弾はトウカイテイオーです。

これまた公式サイトの一番上の列に名前があったので、やっておかなきゃいけないのかな…という安直な理由です。

あとはこれまたドラマ性に溢れる競走馬だったのでさぞかし記事も書きやすいだろう、という打算もあります。

トウカイテイオー・プロフィール

では早速、ウマ娘トウカイテイオーのプロフィールを見てみましょう。

抜群のセンスと才能を持つ、明朗快活なウマ娘。
生徒会長である皇帝シンボリルドルフに憧れ、レースを志した。自分が1番になることを疑わない無邪気な自信家で、その奔放さは誰からも愛される。
独特の柔らかい歩様は『テイオーステップ』と呼ばれる。

なるほど。

では一つ一つ精査していきましょう。

生まれながらの超エリート

まず「抜群のセンスと才能を持つ」という部分は納得です。

競走馬トウカイテイオーが持つ高貴なオーラみたいなものは持って生まれた才能としか思えません。

そしてもし馬の世界にもイケメンという概念があるのなら、トウカイテイオーは間違いなくNo.1です。異論は認めません。

キリッとした瞳、サラサラのたてがみ、整った流星の形など、どこを取ってもイケメンそのもの。

アニメの中で王子様が乗っている馬がそのまま画面から飛び出してきたかのような、なんとも言えない美しさを備えていました。

もちろんその才能はビジュアル面だけではありません。

競走馬としてのセンス、才能も他馬とは一線を画していました。

トウカイテイオーはデビューから一度も負けることなく、競馬の頂点である「日本ダービー」を制します。

まるで才能だけで他馬を手玉に取るかのような走りで競馬ファンを魅了したのです。それは我々一般庶民には手の届かない、まさに憧れの存在だったと言えるでしょう。

ウマ娘内の「明朗快活」という表現も頷けます。これだけの才気溢れる競走馬に、後ろ暗い要素などあるはずがない。

人間社会ではエリートやボンボンは嫌味な存在として扱われることも多いと思いますが、トウカイテイオーはもうそういう次元を超越したところにいる競走馬でした。

超一流の理由

「生徒会長である皇帝シンボリルドルフに憧れ」となっているプロフィール。

こういう部分がやはりガチ競馬ファンとしてはキツいところです。

何故ならトウカイテイオーはシンボリルドルフの息子だからです。

シンボリルドルフもいつか検証することになると思いますが、「皇帝」と呼ばれているだけあって歴史的な名馬です。

いや、そんな表現は陳腐ですね。

シンボリルドルフこそ、日本競馬史上最強馬だと言ってもいい。

その比類なき強さに、ファンはある種の恐れすら抱くほどの競走馬でした。

ルドルフが「王者」ではなく「皇帝」と呼ばれたのは、強いというだけでなくすべてを支配する絶対的存在であったからだと思います。

そんなシンボリルドルフの血を受け継ぐ競走馬としてこの世に生を受けたのがトウカイテイオーです。

「皇帝」から「帝王」へ―――

これは日本競馬史に残る、非常に美しいサイアーラインです。

ただ単に強い馬から強い馬が生まれただけではない。

そこにある運命のようなものを、この2頭には感じさせられるのです。

これが競馬の醍醐味です。

だからこの両馬の関係性を、ゲーム内でちゃんと描けないことにものすごく歯痒い思いがするんですよね。

トウカイテイオーが生まれながら超一流である理由は、この親子の関係があってのものです。「抜群のセンスと才能」という部分も、皇帝シンボリルドルフの息子だから納得がいくのです。

あと文句を言わせてもらえるならシンボリルドルフの「生徒会長」って設定はいくらなんでもじゃないですかね。

ルドルフは日本競馬史上唯一無二の「皇帝」ですよ。「皇帝」から「生徒会長」って、どれだけのスケールダウンなんですか!

イメージにそぐわぬ競争成績

「自分が1番になることを疑わない無邪気な自信家」とプロフィールにありますが、これはなかなか言い得て妙です。

競争生活晩年のトウカイテイオーはただのエリートではなく、我々の心をドン底から絶頂へと激しく揺さぶる、絵に描いたようなドラマチックホースへと変貌を遂げます。

先述の通り無敗で日本ダービーを制し頂点に立ったトウカイテイオー。ところが好事魔多し、その後 骨折が判明し半年以上の休養を余儀なくされます。

それでもその能力に衰えは感じさせず、復帰初戦を楽勝。次走となる天皇賞・春で当時最強古馬だったメジロマックイーン(これもウマ娘内に登場)との一騎打ちに臨みました。

当時の盛り上がりはこれまたもの凄いレベルで、ボクシングで言うならパッキャオvsメイウェザー、いや日本人には薬師寺vs辰吉の方が分かりやすいですかね。とにかく頂上決戦感がえげつないものでした。

なぜ急に格闘技に例えたかというと、当時トウカイテイオーに騎乗していた岡部幸雄元騎手が復帰戦を勝ったあと、その走りを「地の果てまでも伸びていくようだ」と形容しました。

これを聞いたメジロマックイーン騎乗の武豊は「あっちが地の果てなら、こっちは天まで昇ってやりますよ」と応酬。

騎手同士がまるで試合前の格闘家のような舌戦を繰り広げたのです。

歴史的名馬同士の一騎打ち、そして東西トップジョッキーもお互いライバル心むきだし。まさに夢の対決を前に我々競馬ファンのボルテージは最高潮に達したのです。

しかし・・・

結果はあっけないものでした。メジロマックイーンが他馬を寄せ付けず圧勝。トウカイテイオーは5着に完敗。エリート街道をひた進んできたテイオーの競争生活はここから波乱に満ちていくのです。

そのレースの後、またしても骨折が判明。この頃トウカイテイオーは「自身が持つ走りのパワーに体がついて来れないんだ」という、ドラゴンボールのキャラかと言いたくなるようなキャラ付けがなされます。

実際にはそんな動物はいません。でもトウカイテイオーならあり得るかも・・・という人智を超えた不思議な魅力を持っていたことは確かです。

骨折休養明け初戦はGIの天皇賞・秋。ここでもトウカイテイオーは7着惨敗とファンの期待を裏切ります。さすがのテイオーも2回も骨折をしたら終わってしまうのか・・・

そんな心配をよそに、トウカイテイオーは次戦ジャパンカップで復活の勝利を遂げます。ジャパンカップは世界各国から強豪馬が集まる大レース。トウカイテイオーはその名を世界に轟かせたのです。

やっぱりトウカイテイオーが最強だ!誰もがそう思っていた中で年末のグランプリ・有馬記念を迎えます。もちろんトウカイテイオーは一番人気。ここでもその強さを見せつけてくれるとファンは信じていました。

しかし結果はまさかの11着・・・

奇跡の復活、その裏にある意外性

不可解な敗戦を経てもなお、再び頂点を目指して調教を積むトウカイテイオー。そんな彼をまたしても悲劇が襲います。実に3度目の骨折でした。

その後も調整がうまく行かず復帰は遅れに遅れました。気付けば1年が経過、復帰戦はまさにちょうど1年前、惨敗を喫した有馬記念の舞台となりました。

それは363日ぶりの実戦。しかもそれは歴戦の猛者が集う有馬記念。トウカイテイオーの復帰を喜び応援するファンはたくさんいましたが、テイオーが勝つ姿を思い描いた人はほとんどいなかったのではないでしょうか。

ゲートが開いたその数分後、先頭でゴールを駆け抜けたのは他でもないトウカイテイオーでした。おそらく、363日ぶりの実戦でG1を勝つ馬は金輪際 現れないと思います。

無論これはトウカイテイオーに素晴らしい競争能力があってのものです。しかしながら、こんな常識外れの勝利を掴むことは能力だけでは無理だと思います。

「自分が1番になることを疑わない無邪気な自信家」―――このプロフィールの真髄はここにあります。そう、トウカイテイオーは「無邪気」なのです。

言い方を変えるなら「天然」です。頭にドがつくほどの「ド天然」と言っていいでしょう。だから勝利というものを常識の範囲で考えず、それが1年ぶりの実戦であろうがグランプリの舞台であろうが、その能力を全開にできてしまうのです。

トウカイテイオーのイメージまとめ

個人的にトウカイテイオーを有名人に例えるなら「松岡修造さん」です。

見た目は長身イケメンで出自もエリートの御曹司。そして日本男子テニス界にその名を残すスーパープレーヤー。

しかしそんなスマートな印象とは裏腹に、内に秘めた思いはアツアツの激熱。そしてたまに何を言っているのか分からない「ド天然」っぷり・・・トウカイテイオーとダブる部分が多いと思うのです。

自分はエリートだからとお高くとまることなく、天然ぶりで我々を楽しませたり感動させたりしてくれる。そんな存在はそりゃあ「誰からも愛される」でしょうね。

そしてウマ娘トウカイテイオーのプロフィールで最後に「テイオーステップ」に触れているあたりは実在馬への愛を感じざるを得ません。

トウカイテイオーの「気高さ」「柔らかさ」「無邪気さ」、すべて詰まっているのがこのテイオーステップだからです。

しっかりと実在馬へのリスペクトを忘れていないあたりが、ガチ競馬ファンがウマ娘を嫌いになれない理由なのです。(N)