5月16日、明治安田生命J3リーグ第8節が行われ、Y.S.C.C.横浜とテゲバジャーロ宮崎が対戦。
この一戦の主審を務めたのは山下良美審判員。
女性がJリーグの試合を裁くのは史上初の出来事でした。
山下さんは試合後
「審判員4人で協力していつも通りのレフェリングができるように、一つ一つ丁寧に誠実に対応することだけを考えて試合に臨みました。これからもこの機会が続いていき、この状況が当たり前になるよう、目の前の試合に全力で臨みたいと思います」
とコメントを発表しています。
試合でのレフェリングも開始10分で迷わず警告のイエローカードを出すなど、男子選手相手に全く臆することなく的確にジャッジ。
対戦した両チームからも『まったくストレスを感じないレフェリングでした。安心して見ていることができました』と素晴らしい評価を得ています。
もくじ
プロフィール&経歴
山下さんのプロフィール
ここで山下良美さんのプロフィールを見てみましょう。
1986年2月20日生まれ、出身は東京都中野区です。
お兄さんの影響で幼稚園のころにサッカーを始めたという山下さん。
その後、東京学芸大学に進学し女子サッカー部でプレー。
在学中にサッカー部OGである先輩に誘われ審判を体験しますが、当初は気が進まず「1試合だけやればいいや」と思っていたそうです。
ですが何度か試合を重ねる度に「もっとこうしたい」という向上心が芽生え、なでしこリーグの副審を務めたことで責任の重さを感じ、審判という仕事に向き合うようになったといいます。
2015年に国際主審となり、その後も様々な国際大会で試合をジャッジ。
2019年にはFIFA女子ワールドカップフランス大会でも笛を吹き、女性審判としては押しも押されぬ存在になっていったのです。
ついに1級審判員に
そうした功績が認められ、2019年12月にJFA理事会で男子トップリーグの試合を担当できる1級審判員に認定されると、2021年1月、ついに審判委員会が発表する「Jリーグ担当審判員リスト」59人の中に女性として初めて名を連ねたのです。
そして迎えた2021年5月16日、J3リーグ第8節・Y.S.C.C.横浜対テゲバジャーロ宮崎(ニッパツ三ツ沢球技場)の試合で主審として笛を吹き、Jリーグ史上初の女性主審となりました。
サッカーの審判というハードな職業
女性がサッカーの試合を裁くことの難しさ
これは何と言っても「体力」の不安が付きまといます。
ご存知の方も多いと思いますが、サッカーってとにかくボールがずっと動いているので選手も審判も走りっぱなしなんですよね。
サッカーにおける1試合あたりの審判(主審)の走行距離は10km〜13kmと言われます。
選手の平均が大体11kmなので、審判の方が多く走るケースも珍しくないのです。
求められる体力と精神力
もしも試合で審判がバテて正確に試合を裁けなくなってしまったら…
ファウルは見逃され選手交代も気づかれずフリーキックの位置はめちゃくちゃになりアディショナルタイムも適当になり…
とにかく試合はグチャグチャになってしまいます。
体力的に劣る女性が、走りっぱなしのサッカーの試合を裁くのは我々の想像以上に大変なことなのです。
また、時には厳しいジャッジを求められるのも審判の常。
大柄で屈強な男子プロ選手を相手に、怯むことなく冷静な判断を取る精神力も必要になってきます。
山下さんが与える勇気
東京オリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長は、
組織委員会から「ジェンダー平等」や「多様性と調和」について具体的に発信していくことが、日本の社会を変えていくことにつながるのではないか。東京2020大会を通じて、社会の意識改革を目指していきたいと思います
とHPで発信。
丸川珠代五輪相もこんなメッセージを発信しています。
東京大会を史上最高のジェンダー平等の大会とすること、スポーツ界における女性の参画を推進することに全力で取り組んでいきます
いま、スポーツ界も多様性やジェンダー平等など、変化を求められています。
これらへの対策は実際に競技をするアスリートだけでなく、その競技を取り巻く環境から整備していくことが必要になってくるのです。
その意味で「試合をジャッジする審判」という立場から前例を打ち破った山下さんのような存在は、理想的な「多様性と調和」を体現しているのではないかと思います。
まとめ
Jリーグ史上初の女性審判、山下良美さんについて解説してきました。
- 彼女は女性サッカー審判の第一人者である
- 男子トップリーグの試合を担当できる1級審判員に認定されている
- 「多様性と調和」を掲げる日本スポーツ界における希望の光である
ということがお分かりいただけたのではないかと思います。
試合後のコメントでもある通り「女性審判員が男性の試合を担当するのが当たり前になることが、私の目標とすべきこと」という高い志を持っている山下さん。
今後の活躍に期待したいところです。(N)