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ここにはそれがある。
あした使えるはなしのたね
2021年発行

「身代わりの辛み」のはなし。2021.02.04.thu

卓球が強い国といえば誰しもご存知、中国ですね。

その強さは圧倒的で、2016リオ五輪までの卓球競技によるメダル100個のうち、金28個、銀17個、銅8個、つまり半分以上を中国が獲得しており、絶対王者として君臨しています。

その強さの秘密はいろいろありますが、まずはとんでもない競技人口。日本が30万人であるのに対し中国は3,000万人。100倍です。

その練習も強烈で、例えば用具なども幼少期から大人のプロレベルのものを使用します。ラケットで言うと、貼り付けてあるラバーを最初から硬くて重いものにしてガンガン振らせます。

当然、子供ですから筋力が追いつきません。でもそれでいいんです。とにかく「プロが使用する道具に体を合わせる」ことが重要と考えているからです。

対して日本は、子供の成長具合に合わせた用具を使用します。ですから小学生、中学生レベルまでは国際大会などでも中国と日本は五分五分です。

しかし中国選手が成長し、筋力や体格が脳内のイメージに追いついたとき、とんでもない爆発力が生まれるのです。大人になって、五輪や世界戦で勝つことだけを考えているのです。

そして練習環境の整備はもはや国家プロジェクトレベルであり、有名なのが「コピー選手」の製造です。

各国代表クラスの選手のプレースタイル、得意技、はたまた仕草や髪型にいたるまでをコピーした練習相手を用意するのです。日本人でも有名な伊藤美誠選手や平野美宇選手のコピー選手が、中国には当然のように存在します。

そしてもちろんそのコピー選手は中国代表になれなかった選手たちです。国から「お前、明日から○○のコピー選手だからな」と指名されるのだといいます。

コピーであっても中途半端な選手では務まりません。コピーになるのも超一流プレーヤーです。

人生を賭けて今日まで頑張ってきたのに、明日から別人として生きなければならない・・・残酷無比としか言えません。

次元はまったく違いますが私も似たような経験をしたことがあります。中学時代サッカー部だった私は何とかユニフォームを勝ち取り、ある試合でベンチ入りしました。

相手はなかなかの強豪校でしたがいい試合になり、もしかしたら勝てるかも、と監督はじめベンチが色めき立ちました。すると監督は私を呼びこう言いました。「おまえ、Aにユニフォーム渡せ」―――Aは1学年下の後輩でめちゃめちゃ上手いヤツでした。

しかしその大会前にタバコを吸ったか何かで謹慎くらった直後で、その試合ではメンバー登録されていなかったのです(中高でサッカー上手いやつは大概ロクでもないやつが多い)。

監督はあろうことか、メンバー登録してある私の名前でAを出場させようとしたのです。ヒドすぎませんか?実際にAは私が必死こいて勝ち取ったユニフォームを着て試合に出ていきました。その屈辱たるや・・・。

こんな辛い思いを中国選手がしないようにいっそ「クローン人間」を作れないのかなと思いきや、クローン技術で人間を作ることは国連で禁止が宣言されています。

でもちょっと待ってください。禁止されているということは、作ること自体は可能ということですよね・・・。

しかもこれ、2005年に採択されていて、もう随分と前の話なんです。この間にクローン技術も進歩したでしょう。

15年前よりもはるかに精巧な人間のクローンを作ることができるようになっていても不思議ではありません。そして中国はこの採択に反対し、宣言に賛同していません。もしかしてすでに・・・。(N)