見たい、聞きたい、話したい…
ここにはそれがある。
あした使えるはなしのたね
2015年発行

「ファルサ・ボダ」のはなし。2015.11.19thu

―――白いウェンディングドレスに身を包み、緊張する花婿のもとへゆっくりとバージンロードを進む花嫁。

出席者は感嘆のため息をつき、目には涙が溢れる。

だが、カップルが誓いを交わそうとした瞬間、突然客席から男が飛び出し、花婿への愛を叫ぶ。

花嫁はショックのあまり泣きながら会場から走り去り、花婿とその男が結婚する──―。

一見大惨事ですが、これは前もって綿密に計画されたもの。いま、アルゼンチンではその名も「ファルサ・ボダ(偽結婚式)」がパーティーのトレンドなんだそうです。

参加費はおよそ50ドル(約6000円)。

本物の結婚式場を借りてDJを呼び、新郎新婦役を務める俳優を雇います。

昔の恋人や秘密の彼氏が“予期せず”乱入するのがお決まりのサプライズ。

1回の式に600人から700人のゲストが集まり、翌朝6時まで激しく騒ぎます。

女性ゲストのためにブーケトスもきちんと行われるなど、結婚式としての体裁はバッチリです。

そしてもちろんこの「ファルサ・ボダ」は、男女の出会いの場としての意味合いも大いにあるのです。

アルゼンチンでは若いうちに結婚する人は減少していると言います。

政府の調べによると、結婚する女性の平均年齢は28歳から33歳に、男性は29歳から34歳に上がっています。

首都ブエノスアイレスでは1990年に2万2000組が結婚しましたが、2013年は1万1642組に留まりました。

さらに、およそ半分にあたる約6500組のカップルが毎年離婚しています。う~ん、どこかの国でも似たような話を聞きますね。

ところで日本の男女が「結婚しない理由」第1位はご存知ですか?

女性は「自由や独り身の気楽さを失いたくない」で55.3%、男性は「経済的な余裕がない」で52.0%なんだそうです。

どちらも「それを言っちゃあお終いよ」という気がします。

やはり結婚には希望もロマンもないのでしょうか・・・。

まだ「結婚式」をテーマにして出会いの場を作ろうとするアルゼンチンの若者たちの方が、結婚に対して憧れを抱いているように感じます。

日本も街コンだなんだと盛んに行われていますが、それがただの町おこし的意味合いしか持っていないのが残念です。

出会いの先にあるゴール、すなわち「結婚」をイメージできる舞台設定が、もっと必要なのではないでしょうか。ネタ提供は(A)さんでした。(N)